All AboutのUSB Type-C解説記事が間違いだらけなので片っ端から指摘してみた

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商業メディアとしてあり得ないレベルで間違いだらけだったので、気づいた箇所を片っ端から書き出してみました。

問題の記事

こんなお粗末な記事のPVの増やしたくないので、記事を読みたい方は以下の魚拓をどうぞ。
https://web.archive.org/web/20170429181516/https://allabout.co.jp/gm/gc/469010/

“USBのタイプで給電力が変わる”

■USB Type-Cの意外な事実 1
[USBのタイプで給電力が変わる]

恐らく、多くの人はUSB Type-Cは、USB Standard-AやUSB Micro-B(いわゆるMicroUSB)のように端子に裏表があるわけではなく、どちらを上向きにしても接続できたり、電源ケーブルと同じくらいの電力量を供給できたり、高速でデータ通信ができるという程度の理解だと思います。

しかし、供給電力を実際に数値化してみると

・USB2.0の最大給電能力は5V/500mA。
・USB3.0の最大給電能力は5V/900mA。
・USB Type-Cの最大給電能力は5V/3A。

となっています。

理論上ではUSB Type-CはUSB2.0の6倍、USB3.0の3倍強の給電能力を持っています。ただ、USB Type-Cだからと言っても、必ずしも5V/3Aに対応しているとは限らないのが、USB Type-Cの複雑なところ。

3A対応と謳っていない場合は、56Ωの抵抗を検知し、5V/1.5AのBCモードでの給電になってしまう場合があります。

つまり同じUSB Type-Cであっても、最大給電容量は違ってしまうわけです。

何の話??

ケーブルについてなのか、Sinkなのか、Sourceなのか、それらが明示されずにまとめて “USB Type-C” と表現されているため、何について説明しているのか判別できない文章です。

「間違った理解で書いてるんじゃないか?」と怪しい部分がありますが、いかんせん何について説明しているのか判別できないため、間違いの指摘のしようがありません。

単位がガバガバ

・USB2.0の最大給電能力は5V/500mA。
・USB3.0の最大給電能力は5V/900mA。
・USB Type-Cの最大給電能力は5V/3A。

mAとAは統一するのが一般的な気がします。

3A対応と謳っていない場合は、56Ωの抵抗を検知し、5V/1.5AのBCモードでの給電になってしまう場合があります。

恐らくRpのことを指しているのでしょうが、正しくは56Ωではなく56kΩです。値が1000倍違います

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“給電力は接続する機器にも依存”

■USB Type-Cの意外な事実 2
[給電力は接続する機器にも依存]

さらにケーブルを接続する機器側が5V/3Aに対応していない場合もあります。その場合も基本的にはBCモードでの接続となるので、5V/1.5Aでの接続になってしまいます。もちろん、3A対応のケーブルを使っていても、1.5Aまでしか出ないわけです。

これだけでもわかりにくいのですが、さらにUSB Type-Cの機器側の数値は明記していないことも多いので、その機器が実際に3Aなのか1.5Aなのかもわからなくなってしまうと言うことです。

恐らくOK。

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“でも、機器が3Aを謳っているなら変換ケーブルでも3A出る”

■USB Type-Cの意外な事実 3
[でも、機器が3Aを謳っているなら変換ケーブルでも3A出る]

ということは、USBのタイプによって給電能力に違いが出るとなると、片方がUSB Type-Cだとしても、反対側がUSB Standard-AやUSB Micro-Bの変換ケーブル場合は、USB 2.0もしくはUSB 3.0の給電能力になってしまうのでしょうか?

実はそこについては、変換ケーブルであっても5V/3Aに対応したケーブルがあるので、それの場合はType-C to Type-Cと同様に3Aの給電能力で充電できます。

USB Standard-AとUSB Type-Cの組み合わせの変換ケーブル。このタイプでも5V/3Aに対応したモデルはある。

アンペア数を測るアプリ「Ampere」で計測したところ、1680mAを記録。3Aは出ていないが、それでも1.5A以上出ているので、3A対応だということがわかる。

A to CケーブルやMicroUSB to Cケーブルを使う状況でもUSB Type-C Current 3Aを使用できるかのような書き方ですが、これは明らかな間違いです。

A to Cケーブルの場合

まずはStandard-A to Type-Cケーブルを使用する場合についてです。

規格通りにCCが56kΩでプルアップされているケーブルと、Source側の給電能力を判別するように設計されたSinkを組み合わせて使用した場合、SinkはSourceをDefault USB Power機器であると認識するため、Default USB PowerもしくはUSB BCに基づく給電となります。(Quick ChargeのようなUSB以外の規格で給電する場合は除く)

Type-Cの規格ではSourceの給電能力を判別しないSinkも規定されていますが、USB Type-C Current 3Aを利用する機器がSourceの給電能力を判別しない設計になっているとは考えづらいため、やはりこの場合でも使用される電力はDefault USB PowerもしくはUSB BCに基づくものとなります。

MicroUSB to Cケーブルの場合

次はMicro-B to Type-Cケーブルの場合です。

このケーブルを使う場合ではType-Cが給電側であり、Micro-B側が受電側です。給電側がUSB Type-C Current 3Aに対応していたとしても、受電側はType-Cより前に規格されたMicro-Bであるため、USB Type-C Current 3AではなくDefault USB PowerやUSB BCで動作するように設計されています。ですので、当然使用される電力はDefault USB PowerもしくはUSB BCに基づくものとなります。

アプリ “Ampere” について

記事中で使用されているアプリ “Ampere” ですが、これはバッテリーの充放電の電流値を測定するアプリであり、ケーブルに流れている電流値を測定するアプリではありません。

1. What is Ampere?
Ampere is an application for Android (4.0.3 and up) that measures the batteries charging and discharging current.

件の記事中では、あたかもケーブルに1.5A以上が流れているかのような書き方がされていますが、Ampereで表示されている数値はあくまで “バッテリーがどれくらいの速度で充電されているか” という数値であるため、この数値だけでケーブルに流れている電流値を正しく測定することはできません。

ですので、「1.5A以上出ているので、3A対応だということがわかる」といった記事中の説明は、誤った認識に基づく正しくない説明です。

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“給電力はアンペアだけでなくボルト数も変化する”

■USB Type-Cの意外な事実 4
[給電力はアンペアだけでなくボルト数も変化する]

さらにUSBにはUSB Power Delivery(USB PD)と言うものがあり、USBの形状とは別の充電規格があったりします。

これはアンペア数だけではなく、ボルト数をアップすることで、供給電力をアップさせる規格です。規格には、5つのProfileがあり、

Profile1 は最大10W(5V/2A)
Profile2 は最大18W(12V/1.5A)
Profile3 は最大36W(12V/3A)
Profile4 は最大60W(20V/3A)
Profile5 は最大100W(20V/5A)

となります。

MacBook Proの場合は、USB Type-Cの電源アダプターが61W対応なので、Profile4の20V/3Aで、給電ができるようになっています。ニンテンドースイッチの場合は、最大15V/2.6Aの表示があるアダプターを使っているので、こちらもProfile4での充電を利用していると思われます。

しかし、ほとんどの人は、MacBook Proやニンテンドースイッチの給電についてはUSB Type-Cを使っているということはわかっていても、どういった規格でどのくらいの供給電力で充電しているかはわからなかったりするわけです。

このあたりはいちいち調べるのが面倒だったりするので、安全を期するなら、Appleや任天堂の純正品やライセンスをしっかり受けた商品を選ぶ方が良いかも知れません。

急速充電規格は実はこれだけではなく、他にもいろいろ存在します。

必ずしも誤りではない説明もありますが、全体として正しくない説明です。

Profileがどうのこうのと説明されていますが、USB PDにおいてProfileという仕様が存在していたのは1番最初のRev 1.0時点での話であり、Rev 2.0以降ではPower Rulesという仕様に変更されました。

Rev 1.0
出力 5V 12V 20V
Profile 1 (~10W) 最大2A なし なし
Profile 2 (~18W) 最大1.5A
Profile 3 (~36W) 最大3A
Profile 4 (~60W) 最大5A 最大3A
Profile 5 (~100W) 最大5A
Rev 2.0 / 3.0
出力 5V 9V 15V 20V
0~15W 最大3A 必須ではない 必須ではない 必須ではない
15~27W 最大3A
27~45W 最大3A
45~60W 最大3A
60~100W 最大5A

当然、最新のUSB PD対応機器であるMacBook Pro 13/15 (Late 2016)やNintendo Switchの付属品はProfileではなくPower Rulesに基づいた出力ですので、記事中の「Profile4の20V/3Aで、給電ができるようになっています」といった説明は誤りです。

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“ボルト数の変化はUSBのタイプに依存しない”

■USB Type-Cの意外な事実 5
[ボルト数の変化はUSBのタイプに依存しない]

例えばQuick chargeであったり、PowerIQであったり、Apple規格であったり。

またQuick Chargeでもクラスがあり、最新のQuick Charge 3.0は、Quick Chargeを使わない機器とくらべて充電速度は約4倍高く、Quick Charge 1.0よりも約2倍の速度で充電できる。

さらにQuick Charge 2.0よりも充電効率が38%も向上しており、Quick Charge 2.0と同等の充電速度ながら、Quick Charge 2.0対応の機器への充電もできるようになっています。

で、機器側としては、USB Type-Cを使っているスマートフォンだとしても、Quick Charge3.0やPowerIQを採用しているモデルの数は少ないので、端子の形状がUSB Type-Cだったとしても、対応していなかったりもします。

先述した通り、急速充電規格とUSBの端子の形状の規格は別モノなので、USB Type-C to Type-Cでなくても、USB Standard-AやUSB Micro-Bとの変換ケーブルでも、高速給電に対応しているものがあったりします。

PowerIQは急速充電規格ではない

何やら勘違いしているようですが、AnkerのPowerIQは急速充電の規格ではありません。

接続している機器に応じてApple 2.4A給電に対応した機器として振る舞ったり、USB BC対応機器として振る舞う機能です。

Type-CでのQC 3.0は規格外

Type-CでのQuick Charge 3.0はType-Cの規格から外れる行為なので、Type-Cの解説記事でQC 3.0が登場すること自体がおかしいです。

“通信速度はUSBのタイプに依存する”

■USB Type-Cの意外な事実 6
[通信速度はUSBのタイプに依存する]

もっとも数値の低いUSB 1.1は最大12Mbpsで、現在もっとも普及しているUSB 2.0は最大480Mbps、USB 3.0は最大5Gbpsとなっています。

USB Type-Cは、USB 3.0と同じ、5Gbpsとなっていますが、実は通信に関してはUSB Type-C Gen1とUSB Type-C Gen2があり、Gen1が5Gbpsで、Gen2は10Gbpsと倍の速度で通信することができるのです。

ちなみに、通信する機器がGen1であるかGen2であるかの表示はほとんどないので、実際にその機器がどの速度で通信できるのかは判断しかねるような状態だったりします。

“USB Type-C Gen1” などという新種の規格を作っていますが、もちろんそんな規格は存在していません。

USB Type-CとはUSBにおける端子の形状に関する規格であり、転送速度や基本的な給電能力を規定しているUSB 2.0/3.0/3.1とは別の規格です。

あたかもType-Cであればすべての機器・ケーブルでUSB 3.1 Gen1の5Gbps通信ができるかのような書き方がされていますが、これは完全に誤った認識で、USB Type-C機器・ケーブルでもUSB 2.0のみという仕様のものはType-Cの規格で規定されていますし、実際にそういった製品も存在しています。

“USBの通信速度は、ケーブル長にも影響する”

■USB Type-Cの意外な事実 7
[USBの通信速度は、ケーブル長にも影響する]

また、USBのタイプ毎の通信速度は、最大ケーブル長も決まっていたりします。
USB 2.0の場合は最大5mで、USB 3.0やUSB Type-C Gen1は最大2m、USB Type-C Gen2は最大1mとなっています。

給電能力と通信速度の違いとして、片方がUSB Type-Cだとしても反対側がUSB Standard-AやUSB Micro-Bとなっている変換ケーブルの場合は、通信速度が遅い方に準拠してしまうということです。

つまり片方がUSB 2.0のUSB Standard-AやUSB Micro-Bであれば、480Mbpsしか出ないわけです。

先程と同様にUSB 3.1とUSB Type-Cを混同しており、文章全てが間違っています。

C to AやC to MicroUSBのような、いわゆるC to Legacyケーブルでは転送速度がUSB 2.0相当になるかのような説明がされていますが、これは完全なる誤りで、C to LegacyケーブルであってもUSB 3.1 Gen1やGen2での通信が可能な製品は存在しています。

所感

「All Aboutってサイトは名前の通り、いい加減でテキトーでアバウトなサイトなんですね!!」といった感じです。

ロクに調べもせずに件の記事を書いていることがはっきりと露呈しており、商業メディアに掲載されているプロのライターが書いた記事であるとは到底信じられません。調べる能力がないのか、それとも面倒で調べていないのか理由はわかりませんが、このようにロクに下調べもしないで記事を書いてしまうような人は規格の解説記事などには全く向いていないと思います。感想文を垂れ流す自分のブログがせいぜいでしょう。

このような記事を入稿したライターと、その原稿を訂正せずに掲載したAll Aboutの両方が非常にお粗末であると言わざるを得ません。いつからAll Aboutは編集部の存在しない、自由投稿型のブログになったのでしょうか。