USB PDのパワールールとパワープロファイルを詳しく解説【中級者向け】

知っておくと何かと役に立つUSB PD (USB Power Delivery) のパワールールやパワープロファイルについて解説します。

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この記事について

コンピューター関係の代表的な仕様・規格の1つである「USB」は、検索すればたくさんの解説記事がヒットします。その一方で内容が不正確だったり、度重なる仕様改定に追いついていない古い記事も少なくなく、インターネットで正しい情報を得るのは容易ではありません。

そのUSBについて、毎回1つのテーマに沿って解説するシリーズが「今さら聞けないUSB」です。

今さら聞けないUSB
「今さら聞けないUSB」の記事一覧です。

ということで4回目の今回は……と言いたいところですが、パワールールやパワープロファイルは別に全員が理解するべきものだとは思っていないので、第3.5回とします。知っていれば間違いなくUSB PDをより理解することができますが、必須知識ではないので、興味のある方のみお読みください。 (なのでタイトルにも「中級者向け」と入れた)

パワールール (Power Rules) とは

パワールール (Power Rules) とは「USB PDを利用する上で、機器同士の互換性を最大限保つために、電力を供給する側の機器 (Source) や電力を受け取る側の機器 (Sink) が守るべきルール」です。「みんなが好き勝手に使う電圧や電流を決めたら互換性がなくなっちゃうから、ある程度ルール決めてやろうぜ」ということですね。

パワールールと言うとSourceにのみフォーカスが当たる場合が多いですが、Sourceが守るべきソース・パワールール (Source Power Rules) とSinkが守るべきシンク・パワールール (Sink Power Rules) に分かれています。

ソース・パワールール (Source Power Rules)

ソース・パワールールでは、主に「Sourceが必ず出力できなければならない電圧・電流」などを規定しており、その中で標準的に使用される電圧 (Normative Voltages) として以下の4種類を定めています。

  • 5V
  • 9V
  • 15V
  • 20V

ただし全てのSourceがこの4種類の電圧全てを出力できるわけではなく、どの電圧を出力できるかはUSB PDで何ワット出力できるか (PD Power Rating) によって決まります。

それをまとめたものが以下の表です。

USB Power Delivery Specification, Revision 3.0, Version 2.0

表だとちょっと分かりにくいと思うので、具体例を出します。例えばPDP Rating 30Wの場合、

  • 5V : 最低3A
  • 9V : 最低3A
  • 15V : 2A

を出力できなければなりません。20Vに関しては必須ではありません (not required) 。

「出力できなければならない (shall) 」というのがポイントで、これによってSourceの性能をある程度統一することにより、機器間の互換性を確保しています。

もう1つ例を出しましょう。例えばPDP Rating 65Wの場合、

  • 5V : 最低3A
  • 9V : 最低3A
  • 15V : 最低3A
  • 20V : 3.25A

を出力できる必要があります。

ただし、この表は「最低限出力できなければならない電圧・電流」を示しているだけなので、3Aを超えて5Aまで出力することも可能です。

その点を反映すると、以下のようになります。

PDP Rating5V9V15V20V
0〜15W(PDP÷5)A必須ではない必須ではない必須ではない
15〜25W3A〜(PDP÷5)A(PDP÷9)A必須ではない必須ではない
25〜27W3A〜5A(PDP÷9)A必須ではない必須ではない
27〜45W3A〜5A3A〜(PDP÷9)A(PDP÷15)A必須ではない
45〜60W3A〜5A3A〜5A3A〜(PDP÷15)A(PDP÷20)A
60〜100W3A〜5A3A〜5A3A〜5A(PDP÷20)A

これに加えて、ソース・パワールールでは5V・9V・15V・20V以外の電圧に対応することも認めています (Optional Voltages) 。12Vに対応してるACアダプターがちょこちょこありますが、あれがOptional Voltageに当たります。

なお、Optional Voltageに対応する場合も上記の表に当てはまるように出力できる必要があるため、例えばPDP Raging 60Wの場合では

  • 5V : 3A〜5A
  • 9V : 3A〜5A
  • 12V : 3A〜5A
  • 15W : 3A〜4A
  • 20V : 3A

を出力できなければなりません。


ソース・パワールールについてまとめます。

  • 標準の電圧は5V・9V・15・20Vの4つ
  • 12Vなど、標準以外の電圧に対応するのもOK
  • 一定のワット数を超えると、それぞれの電圧で最低3Aを出力できる必要がある

これ以外にもちょこちょこと決まりがありますが、ユーザーレベルで知っておくべきことはこんな感じです。

シンク・パワールール (Sink Power Rules)

ソース・パワールールと比較して影が薄いのがシンク・パワールールです。実際、USB PDの仕様書でもソース・パワールールよりボリュームが少ないです。

シンク・パワールールはユーザーレベルではそこまで気にするべき項目はありませんが、1点、豆知識というかTipをお教えします。

GPD Pocketに代表される中華UMPCの中には、12Vを出力できるACアダプターでないと充電できないものがありますが、これはシンク・パワールール違反です。

シンク・パワールールでは

  • オプション電圧・電流を使用した場合のみでしか動作しないSinkは防止しなければならない (“Preventing Sinks that only function well (or at all) when using Optional voltages and currents.“)
  • オプション電圧・電流に最適化されたSinkは、標準電圧・電流を使用した場合も同様のユーザーエクスペリエンスを提供しなければならない (“A Sink optimized for a Source with Optional voltages and currents or power as described in Section 10.2.3 with a PDP Rating of x W Shall provide a similar user experience when powered from a Source with a PDP Rating of ≥ x W that supplies only the Normative voltages and currents as specified in Section 10.2.2.“)

と定められているため、オプション電圧である12Vでないと充電できない中華UMPCは思いっきりシンク・パワールールに違反しています。

「このACアダプターは12Vを出力できないからXXでは使えないなぁ」みたいなツイートをたまに見かけますが、それは12Vでしか動作しないそのデバイスが悪いのであって、ACアダプターには何の非もないので、そのような欠陥品はさっさと投げ捨ててマトモなデバイスに買い換えるのが正しいです。 (過激派)

パワープロファイル (Power Profiles) とは

パワールールを説明したので、次はパワープロファイル (Power Profiles) について説明します。

まずパワープロファイルのポジションをハッキリさせておくと、パワープロファイルはパワールールの前身となったルール・規定です。既に2016年に廃止されてパワールールに移行しているため、覚えておく必要はありません。「ふーんそういうものもあったのねー」ぐらいに思っておけばOKです。

そのパワープロファイルは以下のような仕様となっています。

プロファイル5V12V20V
Profile 1 (〜10W)2Aなしなし
Profile 2 (〜18W)2A1.5Aなし
Profile 3 (〜36W)2A3Aなし
Profile 4 (〜60W)2A5A3A
Profile 5 (〜100W)2A5A5A

パワールールにある9Vと15Vが無く、5V・12V・20Vの3系統のみとなっています。

といってもプロファイル外の電圧を出力するのもOKなので、9Vや15Vを出力しても仕様違反ではありません。さらに言うと、そもそもパワープロファイル自体がオプション扱いなので、この表の出力を守る必要はありません。5V 3Aなどを出力するのもOKです。

「何を出力したって良いけど、ある程度ルール決めといたほうがSource作るにしてもSink作るにしても便利だよねー」的な意図で定められていたものだと私は解釈しています。


パワープロファイルをざっと説明するとこんな感じですが、章の最初でも言ったようにパワープロファイルは既に廃止されており、それに基づいている製品も少ないため、覚えておく必要はありません。

仮にパワープロファイル時代の製品に出くわしたとしても、CCピン上でBMC方式で通信するというUSB PDの基本的な部分は同じであるため、最新のUSB PD製品とも一応互換性があります。まれに特殊な電圧でしかUSB PDを利用できないデバイスがありますが (iPad Pro 12.9 1st genなど) 、そういったものに出くわした際は諦めましょう。特殊な電圧でしか動作しない = その電圧に対応している特定のACアダプターでないと動作しないため、今からそのようなACアダプターをわざわざ探して入手するのは得策ではありません。パワールールに基づいている最新のデバイスに買い替えましょう。

オマケ : USB PD仕様改定の歴史

USB PDは以下のような流れで仕様が改定されています。

  • 2012年 : USB PD Revision 1.0が策定される
    • 全く普及せず
  • 2014年 : USB PD Revision 2.0が策定される
    • この時はまだパワープロファイルが使われていた
  • 2015年 : USB PD Revision 3.0が策定される
    • この時にパワールールが導入される
  • 2016年 : USB PD Revision 2.0にパワールールがバックポートされる
    • これ以降はUSB PD Revision 2.0もパワールールが使用されている
発行年月Power ProfilesPower Rules
2012年7月Rev. 1.0 Ver. 1.0
2012年10月同 Ver. 1.1
2013年6月同 Ver. 1.2
2014年3月同 Ver. 1.3
2014年8月Rev. 2.0 Ver. 1.0
2015年5月同 Ver. 1.1
2015年12月Rev. 3.0 Ver. 1.0
2016年3月Rev. 2.0 Ver. 1.2同 Ver. 1.0a
2017年1月同 Ver. 1.3同 Ver. 1.1
2018年6月同 Ver. 1.2
2019年8月同 Ver. 2.0

このように1度大きく仕様が変わっているため、USB PDに関する解説は結構情報が錯綜しています。検索すると「USB PDは5V・12V・20Vを使用し……」という説明がされている記事もヒットしますが、そういった記事は

  • 内容自体は合っているが、古い仕様に基づいて書かれている昔の記事
  • ググって出てきた記事を読んだだけでUSB PDを理解したつもりになった人間が、USBの仕様書を全く読まずに書いた質の低い記事

のいずれかであり、大体の場合は間違った情報を得るだけなので時間の無駄です。USB PD関連の情報を集める際は、最低でも2017年以降、できれば2018年以降に書かれた記事を読むことをオススメします。

 
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参考文献 / References

この記事は以下の仕様を元に作成しました。

  • USB Power Delivery Specification, Revision 3.0, Version 2.0
  • USB Power Delivery Specification, Revision 2.0, Version 1.1

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