Ankerのモバイルバッテリーに付属してきた変換アダプターが最悪だった

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Ankerのモバイルバッテリーに付属してきた変換アダプターがUSB Type-Cの仕様に全く準拠していない最悪の代物だったので、何が最悪なのか解説します。

問題の変換アダプターが付属してきたモバイルバッテリー

今回取り上げるのは「Anker PowerCore 10000 PD Redux 25W (モデル番号:A1246) 」に付属してきた変換アダプターです。

この変換アダプターの何が問題なのか

今回問題視しているのは、USB Type-Cケーブルと一緒に付属してきたこの変換アダプターです。

この変換アダプターは2つの点で明確にUSB Type-Cの仕様に違反しています。

そもそも禁止されているタイプの変換アダプター

まず1つ目の仕様違反は「USB Type-Cの仕様で禁止されているタイプのアダプターである」という点です。

USB Type-Cレセプタクル (USB Type-Cメス) to USBレガシーのアダプターは仕様で明確に禁止されており、これには今回のAnkerのアダプターも該当します。

USB Type-C receptacle to USB legacy adapters are explicitly not defined or allowed. Such adapters would allow many invalid and potentially unsafe cable connections to be constructed by users.

USB Type-C Cable and Connector Specification, Release 2.1, Section 2.2

USB Type-Cレセプタクル to USBレガシーのアダプターは100%の互換性や安全性を確保できないため、仕様で明確に禁止されています。

とはいえ、現実問題としてUSB Type-Cレセプタクル to USBレガシーのアダプターが大量に出回っているのはご存知の通りです。この手のアダプターが付属しているだけであればわざわざ個別の記事を書く気はなかったのですが、これから説明する2つ目の仕様違反がちょっとあまりにも酷かったため、記事を書いた次第です。

CCが10kオームでプルアップされている

このAnkerの変換アダプターの2つ目の仕様違反は「CCが10kΩでVBUSにプルアップされている」という点です。

テスターで調べてみたところ、CC1とCC2の両方が10kΩでVBUSにプルアップされていました。

この変換アダプターを使用した場合、ケーブルはUSB Standard-A to USB Type-Cケーブル (以下A to Cケーブル) として機能することになります。

そしてUSB Type-Cの仕様では、A to CケーブルはCCを56kΩでVBUSにプルアップするように規定されています。

Source: USB Type-C Cable and Connector Specification, Release 2.1
Source: USB Type-C Cable and Connector Specification, Release 2.1
Source: USB Type-C Cable and Connector Specification, Release 2.1

10kΩはUSB Type-C Current 3A対応の電力供給側の機器が使用すべきプルアップ抵抗の値であり、A to CケーブルのようなDefault USB Powerの場合は56kΩの抵抗を使用しなければなりません。「すべき (Should) 」ではなく「しなければならない (Shall) 」です。

このような誤った抵抗値でCCがプルアップされているケーブルやアダプターを使用した場合、電力供給側の機器のことを「USB Type-C Current 3A対応である」と給電される側の機器が誤って認識し、過負荷を掛ける恐れがあります。

実際に使ってみた

理論的な話ばかりしていてもピンとこないと思うので、この変換アダプターを使って実際に充電してみます。

※マネしないでください

USB Type-Cの仕様に準拠しているケーブルの場合

まずはUSB Type-Cの仕様に準拠しているケーブルでiPad Pro 11 (2021) を充電してみます。

USB Type-Cの仕様に準拠しているケーブルで充電した場合、iPad Pro 11 (2021) がACアダプターの出力を正しく認識するため、対応している充電規格の範囲内で安全に充電が行われます。

Ankerの変換アダプターを使って充電した場合

続いて、Ankerの変換アダプターとケーブルを使って充電してみます。

USB Type-Cの仕様に準拠しているケーブルで充電した場合は5V⎓1A (5W) で充電されていましたが、Ankerの変換アダプターを使って充電を行った場合は5V⎓3A (15W) で充電されています。これは、Ankerの変換アダプターのCCが10kΩでVBUSにプルアップされているせいで、iPad Pro 11 (2021) がACアダプターのことを「USB Type-C Current 3A対応だ」と誤って認識してしまっているためです。

この写真で使用しているACアダプターは5V⎓3Aを出力できるものなので問題ありませんが、5V⎓3A未満しか出力できないACアダプターやPCで使用した場合は電源に過負荷が掛かり、電圧降下や異常過熱、故障などを引き起こす恐れがあります。そのため、このAnkerの変換アダプターは絶対に使用しないでください。