Innergie C6 レビュー:リクエストされていないのに20Vを出力する充電器 (現在は改修済み)

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InnergieブランドのUSB Type-C ACアダプター「Innergie C6」を入手したのでレビューします。

本レビューで使用しているInnergie C6は、販売元であるデルタ電子(株)からレビュー用に無償提供されたサンプル品です。

製品サンプル以外の金品・金銭の授受はありません。また、レビュー内容に関してデルタ電子(株)は一切関与しておらず、レビュー公開前の事前チェックや修正指示などは行われていません。

これは何?

↓レビューしているACアダプター

今回レビューするInnergie C6には見覚えのある人もいるかもしれません。2017年にクラウドファンディングが実施された「Innergie 55cc」というACアダプターがありましたが、見た目はアレと一緒です。

クラウドファンディング後、Innergie 55ccは海外では「Innergie PowerGear 60C」という名称で一般販売されましたが残念ながら日本では発売されず、日本ではInnergie PowerGear 60Cのマイナーチェンジ版?である「Innergie C60 Pro」が正規販売されていました。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0869FNQBG/

そして今回レビューするInnergie C6は、スイッチング素子がGaNとなりリニューアルした新モデルです。

見た目は一緒ですが、過去モデルのInnergie 55ccやInnergie PowerGear 60C、Innergie C60 Proとは別モデルとなります。

開封

Innergie / A brand of Delta
AC/DC adapter
Model: ADP-60BW N
Input: 100-240V〜50-60Hz 1.6A
Output: 20.0V⎓3.0A, 60.0W / 15.0V⎓3.0A / 12.0V⎓3.0A / 9.0V ⎓ 3.0A / 5.0V⎓3.0A, 15.0W
Made in China
DELTA ELECTRONICS, INC.
制造商: 台达电子工业股份有限公司
PSEマーク: ひし形 / TÜV RT / デルタ電子株式会社
REV.: 00

外観・重量・対応充電規格

コンセントプラグは折りたたみ可能ですが、折りたたんでいる状態からプラグを引っ張り出すのがけっこう大変です。

重量は84gでした。 (公称85g)

充電規格はUSB BC DCPとUSB PDのみ対応しています。

USB PDは以下の電圧・電流の組み合わせに対応します。

  • Fixed 5.0V⎓3.0A
  • Fixed 9.0V⎓3.0A
  • Fixed 12.0V⎓3.0A
  • Fixed 15.0V⎓3.0A
  • Fixed 20.0V⎓3.0A

いろいろ充電してみた

Lenovo Yoga Slim 7 14ITL5

Yoga Slim 7 14ITL5を接続したところ、約58Wが供給されていました。

ThinkPad Yoga 370

ThinkPad Yoga 370を接続したところ、約56Wが供給されていました。

iPad Pro 11 (2021)

iPad Pro 11 (2021) を接続したところ、約27Wが供給されていました。

Galaxy S20 FE

Galaxy S20 FEを接続したところ、約15Wが供給されていました。

iPhone XR

※使用ケーブル: Apple A1656

iPhone XRを接続したところ、約20Vが印加されていました。iPhone XRに限った話ではありませんが、iPhoneシリーズは基本的に9Vをリクエストし、20Vをリクエストすることはないため、20Vが印加されているのは明らかに異常です。

USB PDのパケットログを確認しましたが、iPhone XRは20Vをリクエストしていませんでした。どうもInnegie C6にはHard Reset時の挙動にバグがあり、リクエストされていないのに20Vを印加する場合があるようです。

Hard Resetが発生した場合、USB Default Operationに戻って0Vまたは5Vを出力しなければならないので、リクエストもされていないのに20Vを出力しているのは仕様違反です。

所感

今までいくつもUSB PD ACアダプターを試してきましたが、「リクエストされていないのに5V以外の電圧を印加する」というのは初めてです。過去イチでヤバいACアダプターです。

言うまでもありませんが、「想定よりも高い電圧が印加される」というのはデバイスが故障する可能性があります。MFi認定のあるLightningケーブル (というかLightningコネクター) には過電圧保護機能があるらしいということを風の噂で聞いたことがありますが、それのおかげで今回はたまたまiPhone XRは無事だったものの、運が悪ければiPhone XRがお釈迦になっていたかもしれません。「19.94V」という数字を見た時はマジで肝を冷やしました。

とりあえずデルタ電子にはこの記事の内容+αを報告しておきます。新発売の製品なので持っている人はほとんどいないと思いますが、買わない・使わないほうがいいです。

追記:現在は改修済み

※2022年3月21日 追記

本レビュー公開後、デルタ電子からレスポンスがあったので追記します。

iPhone XRを充電した時に20Vが出力された件については以下のように説明がありました。

ご送付いただきましたレポートをもとに弊社技術部門で解析しましたところ、ご指摘の通り、iPhoneのHard Reset時の動作にバグがあることが確認できました。

Innergie製品のひとつに「C-T 1.5m」というノートパソコン専用ケーブルがあり、C6では独自の技術で電圧の変化を感知し、C-T ケーブルを認識します。C-Tケーブルの電圧とiPhoneのHard Reset時に起きる電圧変化が類似していたため、C6が誤認識をして20Vの出力を行ったことが今回ご指摘いただいたバグの原因となります。

C6のファームウェア更新によりこの現象が改善されます。

新ファームウェアを適用した改善版のInnergie C6のサンプルを送ってもらったので試用しました。

iPhone XR (ケーブル: Apple A1656)
iPhone 13 mini (ケーブル: Apple A2561)
Galaxy S20 FE
iPad Pro 11 (2021)
ThinkPad Yoga 370
Lenovo Yoga Slim 7 14ITL05

上記の通り、改善版のInnergie C6ではiPhone XR + A1656の組み合わせでも正常に充電できるようになっていました。


改修版のほうで改めてInnergie C6を評価すると、良かった点・悪かった点は以下の通りです。

  • Good
    • 最大60Wとは思えない小ささ (3.0 x 3.0 x 6.0 cm)
    • 軽量 (実測84g)
  • Bad
    • コイル鳴き
    • USB PD PPS非対応

Innergie C6が最適なのは、出先でノートPCを充電するための小型・軽量なACアダプターを求めている人です。もちろんノートPCだけでなくスマートフォンやiPadも充電できますが、Galaxyスマートフォンの超急速充電やQuick Charge 4/4+で必要になるUSB PD PPSに対応していないこと、60Wという出力がスマートフォンやタブレットにはオーバーキルなことを考えると、あくまでメインターゲットはノートPCとなります。

また、1つ注意が必要なのがコイル鳴きです。なんやかんやあって私の手元にはInnergie C6が3つあるのですが (サンプル2個 + 自分で買ったやつ1個) 、その全てがコイル鳴きをしているため、静かな環境で使う予定がある人にはオススメしません。周りが騒がしければコイル鳴きも聞こえないので、自宅用はデカくて重い純正ACアダプター、出先用は小型軽量なInnergie C6、といった使い方が良いんじゃないでしょうか。