USB PDとは? 仕様・規格をなるべくシンプルに正しく解説 (でも複雑)

複雑すぎると評判のUSB PD (USB Power Delivery) の仕様について、一般ユーザー向けになるべく簡潔に正しく解説します。

広告

この記事について

コンピューター関係の代表的な仕様・規格の1つである「USB」は、検索すればたくさんの解説記事がヒットします。その一方で内容が不正確だったり、度重なる仕様改定に追いついていない古い記事も少なくなく、インターネットで正しい情報を得るのは容易ではありません。

そのUSBについて、毎回1つのテーマに沿って解説するシリーズが「今さら聞けないUSB」です。

今さら聞けないUSB
「今さら聞けないUSB」の記事一覧です。

ということで3回目の今回は「USB Power Delivery」について解説します。

USB PDとは

そもそもUSB PDとは何なのかという話ですが、USB PDは数あるUSBの仕様の中の「電力供給に関する仕様」にあたります。

  • データ転送に関する仕様 : USB 2.0, USB 3.2, USB4
  • 電力供給に関する仕様 : USB Power Delivery (USB PD), USB Battery Charging (USB BC)
  • 端子の形状に関する仕様 : USB Type-C, USB 3.1 Legacy Cable and Connector

USB PDは電力供給に関する仕様」ということを覚えたら次に進みましょう。

USB PDのメリット

この記事をお読みの方のほとんどは、どこかで「USB PD」という存在を知り、そのUSB PDについて知りたくてこの記事をお読みなのではないかと思います。

なぜUSB PDというものに注目が集まり、普及が進んでいるのかと言うと、ACアダプタを統一できるからです。

この写真のノートPC・タブレット・スマートフォンは全てUSB Type-CかつUSB PD対応なので、同じACアダプタ・ケーブルで充電することができる

従来、ノートPCやAndroid端末、iPhone/iPadは端子の形状や充電時の入力電圧が異なっており、ACアダプタを使い回すことはできませんでした。特にノートPCは「同じメーカーの機種なのに端子の形が違う」なんてこともしばしばあり、ほぼ使いまわしの出来ない、非常に無駄の多い部分でした。

しかしながら、USB Type-CやUSB PDという共通の仕様が策定されたことにより、対応している機器同士であれば、共通のACアダプタ・ケーブルを使って充電できるようになりました。

このように、「同じACアダプタでPCもスマートフォンも充電できる」というのがUSB PDのメリットです。

 
広告

USB PDについて知っておくべきポイントは5つ

「同じACアダプタでスマホもPCも充電できるならUSB PD使うしかないやん!」と思うかもしれませんが、USB PDを利用するには色々と気をつけなければならない点があります。

色々説明されても読む気も無くなるし覚えきれないと思うので、必要最小限だけを説明します。 (といっても必要最小限の時点ですでに複雑なのですが)

  • USB PDは最大100W
  • USB PDはUSB Type-Cのみで利用できる
  • USB Type-CだからといってUSB PDに対応してるとは限らない
  • 何ワット以上で充電できるかはその機種次第
  • 3Aまでのケーブルと5Aまで流せるケーブルがある

USB PDは最大100W

USB PDは最大100W (20V/5A) まで供給することが可能です。例えばiPhone付属のACアダプタは5W出力ですから、USB PDはその20倍もの電力を供給することが可能ということになります。

Anker PowerPort Speed PD 60はUSB PDで最大60Wまで出力できる (レビュー記事)

ただし、「最大100W」であって「USB PD = 100W」ではありません。「USB PDに対応しているけれど最大60W出力のACアダプタ」というものも存在しています。 (というか100W出せるACアダプタのほうが少ない)

USB PDはUSB Type-Cのみで利用できる

USB PDはUSB Type-Cのみで利用することができます

「USB Type-C」というのはUSB端子の形状の一種で、リバーシブルなことが特徴です。

USBの端子の形状を全て解説。これを読めば全て区別できる
種類が多すぎて分かりにくいUSBの端子の形状について、写真付きで全種類解説します。

片方だけがUSB Type-Cなケーブルもありますが、USB PDはUSB Type-Cでしか利用できないため、片方だけではダメです。ACアダプタ・ケーブル・スマートフォン・PCなどが全てUSB Type-Cで統一されている場合にのみUSB PDを利用することができます

USB Type-CだからといってUSB PDに対応してるとは限らない

非常にややこしい部分ですが、USB Type-CだからといってUSB PDに対応しているとは限りません

USB Type-Cのスマートフォン、USB Type-CのノートPC、USB Type-CのACアダプタなど色々ありますが、USB PDに対応しているどうかはその機器次第です。

例えばこれはMSIのPS42 8RBというノートPCのスペックですが、「USB Power Delivery非対応」と書かれています。このように明記してくれているのはまだ親切な方で、対応しているのかしていないのか書かないメーカーも少なくありません。

何ワット以上で充電できるかはその機種次第

ノートPCはスマートフォンなどと比べると消費電力が大きく、設計上の理由などからUSB PDの使用に一定の条件が定められている場合があります。そういった時に起きるのが「Xワット以上じゃないと充電できない」という事態です。

メーカーや機種によってもかなり差があるので一概には言うのは難しいところですが、ノートPCを充電するのであれば最低45W、できれば60W以上のACアダプタを使うことをオススメします。

3Aまでのケーブルと5Aまで流せるケーブルがある

これまたややこしい話ですが、両端がUSB Type-CのC to Cケーブルには、3A (60W) までしか流せないケーブルと、 5A (100W) まで流すことのケーブルの2種類があります

例えばMacBook Pro (16インチ) のACアダプタは96W (94W) 出力ですが、5A対応のケーブルを使わないと94Wは出力されません。3Aまでのケーブルを使った場合は60Wに制限されてしまいます。

よくある誤解 : USB PD非対応ケーブル?

非常に誤解を与える表現というか、正しくない表現だなぁと思っているのが「USB PD非対応ケーブル」です。メーカーのHPに「このケーブルはUSB PD非対応です」というようなことが書いてあったり、解説系の記事で「USB PDを使用するには対応しているケーブルが必要です」といった説明を読んだことがある方も多いのではないでしょうか。

ハッキリと言っておきますが、USB Type-C・USB PDの仕様上、「USB PD非対応ケーブル」というものは存在しません。歴史上の多少の混乱はさておき、現実問題として百均のケーブルでもUSB PDは動作します。 (「できる」と「安全」は別の話なので、動作するからといって100円のケーブルに十数万円のデバイスの命を預けるのもどうかと思いますが)

USB PDは非常にややこしく誤解も多い部分なので、例えばA to Cケーブルの説明で「USB PD非対応です」といったことが書いてあるのは理解できます。メーカーもいちいち「このケーブルはUSB PDに対応しているのか!?」という問い合わせが来ても面倒でしょうから、これに関しては仕方のない部分だと思います。しかし、解説系の記事で「USB PDには対応ケーブルと非対応ケーブルがあります」といった説明がされていたらそれは明確に間違いなので、そのような記事は真に受けなくてOKです。

USB PDまとめ

最後に、USB PD (USB Power Delivery) についてまとめます。

  • USB PDは最大100W (20V/5A)
  • USB PDはUSB Type-Cのみで利用できる
  • USB PDに対応しているかどうかはその機器によって異なる
    • PC・スマホ : 対応しているかはそのモデル次第。ノートPCについては、何ワット以上で充電できるかどうかについても気をつける必要がある。
    • ケーブル : C to Cケーブルなら全てのケーブルでUSB PDが動作する。ただし、3Aまでのケーブルと5Aまで流せるケーブルがある。
    • ACアダプタ : USB Type-CであってもUSB PDに対応してるとは限らない。また、何ワットを出力できるかはそのACアダプタ次第。

これでもなるべく簡潔に必要最小限だけを説明したつもりですが、それでもかなりややこしいのは否めません。しかしながら、これからUSB Type-C・USB PDに統一されていくのは間違いないので、頑張って理解してもらって、USB Type-C・USB PDを活用して快適な充電ライフを送ってもらえればと思います。

参考文献 / References

この記事は以下の仕様を元に作成しました。

  • USB Power Delivery Specification, Revision 3.0, Version 2.0
  • USB Type-C Cable and Connector Specification, Release 2.0
タイトルとURLをコピーしました