iPhone・iPadを充電できないUSB Type-C ACアダプタの話

一部のUSB Type-C ACアダプタは、高速充電 (USB PD) 非対応のiPhone・iPadを充電できないので注意しましょう。

充電できない例

百聞は一見にしかず、ということで、まずは以下の画像をご覧ください。ACアダプタはRAVPowerのRP-PC017、ケーブルはAppleのUSB-C to Lightningケーブル (A1656) 、スマホはiPhone 7です。

画像の通り、iPhone 7を充電できていません。

充電できる例

Apple純正でないUSB Type-CのACアダプタは全てiPhone・iPadを充電できないのかと言うと、必ずしもそういう訳ではなく、サードパーティ製でも充電できるACアダプタはあります。

例えばAnkerのA2014112などです。

先程のRAVPowerと同じ「サードパーティ製のUSB Type-C ACアダプタ」ではあるものの、このAnker A2014112ではiPhone 7を充電できています。

充電できない理由

RAVPower RP-PC017、Anker A2014112、どちらもUSB PDで30Wまで出力できるACアダプタです。

しかしながら、いざUSB PD非対応のiPhone・iPadを接続すると、Anker A2014112のみが充電できるという結果になります。一体この2つの間で何が違うのでしょうか。

USB BC DCP・Apple 12W

RAVPower RP-PC017でiPhone 7を充電できなかった理由は、「USB BC DCP、Apple 12Wのいずれにも対応していないから」です。

「USB BC DCP? Apple 12W? 何それおいしいの?」という方も少なくないかと思いますが、簡単に言うと「USB Standard-AのACアダプタしかなかった時代に主流だった充電用の規格」です。USB Type-Cが登場するよりも前にメインで使われていた規格なので、USB Type-CのACアダプタでは対応しているものと対応していないものがあります

今回の場合では、Anker A2014112はApple 12W (とUSB BC DCP) に対応している一方で、RAVPower RP-PC017はその両方に対応していません。そのため、RAVPower RP-PC017のみ充電できないという結果となりました。

見分ける方法

製品のスペック表記などからUSB BC DCPやApple 12Wへの対応を見分けられれば良いのですが、残念ながらそれらからは見分けることは出来ません。実際に購入し、ブレークアウトボードとテスターで調べる必要があります。 (あとはKotomiシリーズなど)

一応当サイトでは、「規格に (概ね) 適合している」と判断したものであればUSB BC DCPやApple 12Wのテストを行っています。手前味噌ではありますが、参考になるかと思います。

ある意味当然とも言えますが、Apple純正の「29W/61W/87W USB-C電源アダプタ」は全てApple 12Wに対応しています。MacBookユーザーであれば、それらを使うのも良いでしょう。

高速充電に対応している機種なら問題なし

充電できないのはあくまで「高速充電 (USB PD) に対応していないiPhone・iPad」だけです。

以下に挙げる「高速充電 (USB PD) 対応のiPhone/iPad」であれば、RAVPower RP-PC017のような「USB BC DCP・Apple 12Wに対応していないUSB PD対応ACアダプタ」でも充電できるはずです。

  • iPhone 8 / 8 Plus
  • iPhone X
  • iPad Pro 12.9 (2015)
  • iPad Pro 10.5 (2017) / 12.9 (2017)

なお、USB BC DCP・Apple 12W・USB PDのいずれにも非対応のUSB Type-C ACアダプタではどうなるか不明です。

余談

なぜこんなことが起きるのか

同じUSBなのになぜこんなことが起こるのか不思議に思うかもしれませんが、USB Type-Cでの給電の制御は今までのUSBと全く異なる方法であるため、仕方ない部分があります。

USBは本来データ転送用の規格であるため、当初は給電を重視されずに策定されました。例えばUSB 2.0では5V/0.5Aが規格上の最大出力ですが、USB 2.0が策定された時点ではUSBメモリなどをバスパワーで動かせる程度で十分だったわけです。

しかしながら、iPod・Walkmanといった携帯音楽プレイヤーや、スマートフォン・タブレットのような「USBで充電する機器」が普及することにより、USBによる給電の重要度が飛躍的に増しました。

そういった背景の中で生まれたのがUSB BCであり、Apple 12Wのようなメーカーごとの独自給電規格です。こういった規格はUSB Type-C登場以前に策定・普及したものなので、当然「Type-CではないUSB端子」で動作することが前提となっています。そのため、USB 2.0のデータ通信用のピンであるD+/D-を使って動作を制御するようになっています。

それに対してUSB Type-Cは、スマートフォンやタブレットが既に普及した状態で策定されました。ですので、当然USBでの給電についても考慮されています。具体的に言うと、USB Type-CではConfiguration Channel (CC) というピンが追加されています。これはType-Cのみに存在しているピンで、USB Type-C CurrentやUSB PD、Alternate Modeなどの制御に使われます。

そうすると、「Type-C以前はD+/D-」「Type-C以降はCC」という風に、給電の制御に使うピンが異なっていることが分かります。iPhone/iPadに採用されているLightning端子が登場したのはType-C登場以前の2012年ですので、給電の制御には基本的にD+/D-を使っていると推測されます。 (クローズドな規格なので断言はできない)

こういった「そもそも制御に使っているピンが異なっている」という背景があるため、USB Type-CのACアダプタでiPhone/iPadを充電できないという事態が発生します。 (そのため、恐らくMicroUSBのAndroid端末でも起こりうる)

Anker A2053511の話

上記のレビュー記事内でも指摘していますが、Anker A2053511は途中で仕様が変わっています。一般的には「Source_Capabilitiesメッセージが最大45Wから最大30Wに修正された」という認識で良いのですが、実はもう1点改修が入っています。

一般にはあまり知られていませんが、改修前のV1はUSB Type-CポートでiPhoneを充電することができません。Amazonのレビューを探すと、いくつかその件について言及しているものが見つかります。(レビュー1レビュー2レビュー3)

なぜV1のUSB Type-Cポートで充電できないかというと、USB BC DCPにもApple 12Wにも対応していないからです。つまり、RAVPower RP-PC017と同じ状況です。

改修後のV2であればUSB BC DCPに対応するようになっており、高速充電 (USB PD) 非対応のiPhoneも問題なく充電できます。 (写真の機種はiPhone 7)

所感

LightningやMicroUSBといったレガシーな端子を採用している機器を充電するために、まだしばらくはUSB Standard-AなACアダプタを手放せなさそうですね。

参考

Universal Serial Bus Type-C Cable and Connector Specification Release 1.3
http://www.usb.org/developers/docs/

How do USB Type-C chargers support older USB devices? – Benson Leung
https://medium.com/@leung.benson/how-do-usb-type-c-chargers-support-older-usb-devices-70c978eae9ec