USB-IF認証済み? Inateck USB PD対応45W ACアダプタ レビュー

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InateckブランドのUSB PD対応45W ACアダプタ(型番:UC1002)を購入したので、レビューを行います。

対象の製品

クイックレビュー

パッと見はマトモっぽいものの、細かいところで怪しい挙動をしているACアダプタです。それらの挙動が原因で変な動作を引き起こす可能性は低いと思いますが、若干の不安は残ります。

「今すぐUSB PDで45Wを出力できるACアダプタが必要なんだ!」みたいな人であれば止めはしませんが、そうでない人には特にオススメはしません。

使用機器

  • メディアロジック USB Power Delivery アナライザ DTW2U3 「PDワットみるC」 (製品ページ / Amazon)
  • 横河計測 ディジタルマルチメータ 732-03 (製品ページ / Amazon)
  • Apple USB-C充電ケーブル (型番:MLL82AM/A)
  • Apple USB-C – Lightningケーブル (型番:MK0X2AM/A)
  • Google USB Type-C to Type-C ケーブル (型番:不明 | 製造番号:不明 | 22.5W ACアダプタの付属品)
  • その他、電子負荷やType-Cブレークアウトボードなど
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開封・製品画像

  • SWITCHING ADAPTER
  • UCC1002/ASSA73g-05091520300
  • MODEL: ASSA73a-05091520300
  • INPUT: 100-240V~50/60Hz 1.2A
  • OUTPUT: 5.0V==3.0A or 9.0V==3.0A or 15.0V==3.0A or 20.0V==2.25A
  • PSEマーク: あり (ひし形 / JET / Inateck株式会社)
  • AQUIL STAR PRECISION INDUSTRIAL (SHENZHEN) CO., LTD.
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USB-IF認証について

製品外装には色々型番ぽい記号が書かれていてどれが型番なのか分かりにくいですが、「ASSA73a-05091520300」でUSB-IF認証済みACアダプタのリストを検索すると1件ヒットしました。(Test IDは1000087)

45Wという出力やAquil Star Precision Industrial (Shenzhen) Co., Ltd.という製造元が一致していることから、今回レビューを行っているInateck UCC1002とリストに載っているASSA73a-05091520300は同一製品であると考えられます。

販売に当たって「USB-IF認証済み」などとは謳われていませんが、Inateck UCC1002はUSB-IF認証済みACアダプタと見なして良さそうです。

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USB PD

Inateck UCC1002はUSB PDに対応しており、機器を接続すると「5V/3A」「9V/3A」「15V/3A」「20V/2.25A」という4つのFixed Supply PDOを持つSource_Capabilitiesメッセージを送信します。

このSource_Capabilitiesメッセージは外装の表記と一致しており、その点においては特に問題はありません。しかしながらこれとは別に、1点少し気になる挙動を確認しました。

それは、USB PDのネゴシエーション後にDiscover Identifyメッセージ・Discover SVIDsメッセージの送受信を行っていたという点です。

Discover Identifyメッセージ・Discover SVIDsメッセージというのは、簡単に言うと「あなたは何者ですか?」「私はこういう者です」「あなたは何に対応しているんですか?」「私はXXに対応しています」という確認のパケットです。そのため、それらがやり取りされていたからといっていきなり何か変な動作を引き起こすようなことはありません。

しかしながら、「機器にUSB PDで給電する」という目的に対して必要なやり取りかというとそれはそれでノーなので、少し気になるのは否めません。(後述の「iPhone/iPadが接続された時にのみ挙動を変える」という実装のために行われていると考えられる)

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Split PDO

Inateck UCC1002はSplit PDOの可能性があります。

「可能性がある」とは何とも曖昧な表現ですが、その理由はiPad Pro 10.5を接続した時にだけ確認したからです。

Inateck UCC1002は機器が接続されると「5V/3A」「9V/3A」「15V/3A」「20V/2.25A」という4つのFixed Supply PDOを持つSource_Capabilitiesメッセージを送信します。これはiPad Pro 10.5を接続した場合に限らず、すべての機器で行われます。

普通はその後にネゴシエーションが行われて終わりなのですが、このInateck UCC1002の場合、iPad Pro 10.5を接続した場合でだけネゴシエーション後に「5V/3A」「15V/3A」という2つのFixed Supply PDOを持つSource_Capabilitiesメッセージを送信していることを確認しました。

この挙動の問題点は「送信されているPDOが少ない」という点です。正常な動作であれば5V・9V・15V・20Vという4つのPDOが機器に対して送信されるはずですが、もしこのSplit PDOな挙動が起きた場合、機器に送信されるPDOは5Vと15Vの2つのみとなります。世界中のあらゆるUSB PD製品と接続テストをしたわけではないので起こるか起こらないかは未知数ですが、例えば20Vを必要とするノートPCに接続した際にこの挙動が起きた場合、正常に給電できないことが予想されます。

Inateckの方から以下のように説明を受けました。

早速ですが、ブログでご掲載いただきましたレビュー記事をご拝読させていただきました。内容がとても詳しくてプロフェッショナルですと思われています。

ご指摘いただきました2つの問題点については、弊社の製品部の担当の方も非常に重視しており、早速に製造工場の方と連絡して、確認して検証いたしました。

>USB PDのネゴシエーション後にDicover Identify/SVIDsの送受信を行っていたという点です。

この点については、iOSのデバイスはPD充電プロトコルに適合しないので、高速充電を実現するために、Dicover Identify/SVIDsの送受信を行って、充電されるデバイスがiOSデバイスかどうかを確認してから、iOSのデバイスの「5V」の充電プロトコルをPD充電プロトコルに変換します。

>送信されているPDOが少ないという点です。

Apple製品の特定性により、iOSデバイスを充電するときに、普通充電(5V)と高速充電、2つのPDOしか要求しません。iPhone8の充電を検証した結果も、送信されるPDOは5Vと9Vの2つのみとなります。iOS以外のデバイスを充電する時には4つのPDOを提供します。

もしこちらが理解不足や間違いましたところがありましたら、ぜひご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

ご多忙の中に、メールをご覧になっていただき、誠にありがとうございました。

では、よろしくお願いいたします。
———————————————————
Inateck営業担当
Eika

「iOSのデバイスの「5V」の充電プロトコルをPD充電プロトコルに変換します」という部分はちょっと何言ってるか分からないですが、それ以外の説明は「iPad Pro 10.5を接続した場合にのみSplit PDOっぽい挙動が確認された」という事象と辻褄が合うものです。

中国の方が頑張って書いたであろう日本語なので少し意味を読み取りにくいですが、

  • Discover Identifyメッセージ・Discover SVIDsメッセージを送受信するのは接続されているデバイスがiPhone/iPadなのかを確認するため
  • 通常はSource_Capabilitesメッセージで4つのPDOを通知する
  • iPhone/iPadが接続されていると確認した場合にのみ通知するPDOを2つに削る

と私は解釈しました。

あくまで個人的な意見ですが、この実装は完全に「余計なお世話」です。というのも、USB PDにおいて電圧・電流を選択するのは電力を受け取る側の機器(Sink)の役割だからです。

USB PDでの電力供給は、電力を出力する側の機器(Source)が「私はXボルトxアンペア・Yボルトyアンペア・Zボルトzアンペアを出力できます」とSinkに対して通知し、Sinkはその中から自身に最適な電圧・電流を指定して電力を供給してもらう、という流れで行われます。出力する電圧・電流を決めるのはSourceではありません。Sinkが対応していない電圧・電流を通知されたとしても、別の対応している電圧を指定すれば問題なく安全に給電を行うことができる、という理屈です。

それを前提に考えてみると、Inateck UCC1002の挙動はそういった理屈を完全に無視した設計となっています。世界中の機器と接続テストを行えますか? 不可能です。USB PD周りの仕様が変更されたiPhone/iPadが発売されたらどうするつもりなのでしょうか。

そういった観点から、「接続されている機器を確認して、特定の機器だった場合にのみ挙動を変える」という実装は、USB PDの互換性に対する考え方を無視している・理解していない設計だと言えるでしょう。

USB BC DCP

Inateck UCC1002はUSB BC DCPに対応しています。

Apple 12W

Inateck UCC1002はApple独自の12W(2.4A)給電に対応しています。

過電流防止機構

Inateck UCC1002は過電流を防止する機構を備えており、5V時では約17Wで出力がシャットダウンされました。

Vbus

Inateck UCC1002はUSB Type-Cの規格通り、機器が接続されるまでVbusに電圧を印加しません。

Configuration Channel

Inateck UCC1002のCC1・CC2はUSB Type-Cの規格通り、それぞれが別個のRpでプルアップされています。

所感

「USB-IFの認証を取得している製品でもこんな感じかー」とちょっとがっかりしました。もうちょっとしっかりテストしてもらいたいものですね。