iPad Pro 11 (2018) 付属のACアダプターとケーブルの仕様を確認してみました。
ケーブル
ケーブル内臓のeMarkerが送信するSOP’のDiscover Indentifyコマンドによると、このケーブルはUSB 2.0で5A対応のようです。
iPad Pro 2018の発表と同時に「USB-C充電ケーブル(1m)MUF72FE/A」が製品ラインナップに追加されたので、おそらくそれと同一品と思われます。
ACアダプター
USB PD
ACアダプターの型番は「A1720」で、出力は「5V/3A」「9V/2A」と記載されています。
USB PDのリビジョンは2.0で、Source_Capabilitiesメッセージの内容は、外装の印刷と同じ「5V/3A」「9V/2A」のFixed Supply PDOでした。
この出力はUSB PDのパワールール通りであり、iPad Proはもちろんのこと、Apple以外のUSB Type-C製品とも高い互換性が期待できます。
USB PD以外の充電規格
このACアダプターが対応しているのはUSB BC 1.2 DCPのみで、Apple 2.4AなどのApple独自プロトコルには対応していません。
色々充電してみた
iPad Pro 11
iPad Pro 11 (2018) を接続したところ、9V/2AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約18Wが供給されていました。
iPad Air 2
USB PD非対応のiPad Air 2を接続したところ、約14Wが供給されていました。
Apple 18W ACアダプター (A1720) はApple 2.4A等には非対応であるため、iPad Air 2からはただのUSB BC 1.2 DCP対応ACアダプターとして見えるはずですが、なぜか3A近くまで引いていました。理由は不明です。
ThinkPad Yoga 370
ThinkPad Yoga 370を接続したところ、9V/2AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約18Wが供給されていました。
Nintendo Switch
Nintendo Switch (2019) を接続したところ、9V/2AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約12Wが供給されていました。
Pixel 3
Pixel 3を接続したところ、9V/2AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約16Wが供給されていました。
OnePlus 7T
OnePlus 7Tを接続したところ、5V/3AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約15Wが供給されていました。
細かい話
上の画像は、iPad Pro 11 (2018) を付属のACアダプターとケーブルで充電した際のUSB PDのメッセージのログです。
まず気になったのが、5VのRequestメッセージのCapability Mismatchのビットが1になっている点です。Capability MismatchはSinkの電力要求をSourceが満たせない場合に1とセットされるため、「付属のACアダプターなのに出力が足りないのか?」と思ったのですが、どうもちょっと違うようです。
いろいろ試してみたのですが、iPad Pro 11は18W未満でネゴシエーションする場合にもれなくCapability Mismatchのビットを1にセットしていました。MacBookシリーズも、付属ACアダプター未満 (MBP 13″であれば60W未満、MBP 15″であれば86W未満) の電力でネゴシエーションを行う場合にはもれなくCapability Mismatchのビットを1にするようなので、「供給されている電力が付属ACアダプター未満」ということを示しているだけのようです。なのでCapability Mismatchが1になっているからといって、あまり気にする必要はなさそうです。
次に気になったのが、Apple Alternate Modeです。上記のログの通り、VID 05ACのAlternate Modeに入っていました。05ACは10進数にすると1452であり、1452はAppleのUSB Vendor IDであるため、これはApple独自定義のAlternate Modeです。
Apple純正のUSB Type-C ACアダプターで充電しているMacBookシリーズはシステム情報にACアダプターのシリアルナンバーが表示されますが、あれはシリアルナンバーがApple Alt ModeでMacBookへ伝えられることによって実現しています。そのため、恐らくiPad Pro 11でもMacBookシリーズのようにシリアルナンバー等のやり取りが行われているものと思われます。