XiaomiのPOCO F3を購入したのでレビューします。
POCO F3ってどんなスマホ?
POCOというと、2018年に出たPOCOブランド初のスマートフォン「Pocophone F1 (インドではPOCO F1) 」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。約300ドルというミッドレンジ並の価格ながらSnapdragon 845 / 6GB RAM / 64GB UFS 2.1ストレージという当時のフラグシップ級のスペックを備えており、日本でもガジェット好きの間で話題になっていたスマートフォンです。
その後Xiaomiは2020年に「POCO F2 Pro」をリリースしましたが、POCO F2 ProはPOCO F1ほどのインパクトがなく、POCO F1と比べるとそこまでの注目は集めていなかった印象です。
そのPOCO F2 Proを経て2021年に発売されたのが、今回レビューするPOCO F3です。Snapdragon 870 / 6GB RAM / 128GB UFS 3.1ストレージといったスペックながら実勢価格299〜329ドルとなっており、POCO F1を彷彿とさせるスペック・価格設定となっています。
POCO F3の詳しいスペックは以下の通りです。
機種名 (型番) | POCO F3 (M2012K1AG) |
---|---|
ディスプレイ | 6.67 inch 2400 x 1080 px (20:9) 有機EL (E4発光体) リフレッシュレート 120 Hz Gorilla Glass 5 |
端末サイズ | 163.7 x 76.4 x 7.8 mm |
重量 | 196 g |
SoC | Snapdragon 870 |
RAM | 6 GB / 8 GB |
ストレージ | 128 GB / 256 GB |
microSD | 非対応 |
前面カメラ | 画素数: 20 MP F値: 2.45 |
背面カメラ (メイン) | 画素数: 48 MP F値: 1.79 |
背面カメラ (超広角) | 画素数: 8 MP F値: 2.2 画角: 119° |
背面カメラ (マクロ) | 画素数: 5 MP F値: 2.4 |
バッテリー | 4520 mAh |
急速充電 | 33W |
W-CDMA (3G) | 1, 2, 4, 5, 8 |
LTE (4G) | FDD: 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 17, 20, 28, 66 TDD: 38, 40, 41 |
NR (5G) | n1, n3, n5, n7, n8, n20, n28, n38, n41, n77, n78 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | Bluetooth 5.1 |
イヤホンジャック | なし |
NFC | あり |
防水・防塵 | 非対応 |
ワイヤレス充電 | 非対応 |
ソース | POCO |
今回私が購入したのは1番安い6GB / 128GBモデルです。AliExpressのPOCO Official Storeから購入しました。
パッケージ:ACアダプターも変換アダプターも付属
POCO F3のパッケージには以下の物が同梱されています。
- POCO F3 本体
- 画面保護フィルム (本体貼付け済み)
- ケース (TPU製)
- ACアダプター (Mi Turbo Charge 33W対応)
- USBケーブル (A to C / Mi Turbo Charge 33W対応)
- イヤホンジャック変換アダプター
- ドキュメント類・ステッカー
AppleがiPhone 12シリーズからACアダプターを同梱しなくなり、後追いでAndroidスマートフォン各メーカーもACアダプターを同梱しなくなりつつありますが、POCO F3はACアダプターもケーブルもバッチリ付属してきます。 (というかXiaomiはiPhoneやGalaxyと違って充電が独自規格なので付属せざるを得なゲフンゲフン)
ACアダプターだけであればそこまでの驚きはありませんが、POCO F3にはイヤホンジャック変換アダプターも付属してきます。イヤホンジャックがないスマートフォンは星の数ほどあれど、変換アダプターが付属してくるスマートフォンは最近では珍しいのではないでしょうか。画面保護フィルムやケースも付属してくるため、一切の追加コストなしで使い始めることができる親切なパッケージとなっています。
ACアダプターやイヤホンジャック変換アダプターの細かい仕様は以下の記事にまとめてあります。
外観:ホワイトは指紋が目立たなくていい感じ
POCO F3の売りの1つであるディスプレイですが、かなり良いです。120Hzなのは当然として、E4という発光体の性能が良いらしく、明るさ・コントラスト・発色、どれを取っても3万円台のモデルとは思えない視覚体験をできます。定価6万円ぐらいのGalaxy S20 FEというスマホも使っていますが、POCO F3のほうが明らかに上です。
POCO F3にはブラック・ホワイト・ブルーのカラーバリエーションが用意されていますが、今回はホワイトを購入しました。ホワイトは “すりガラス” 風のマットな仕上げとなっており、指紋はほぼ目立ちません。 (ブラックはテカテカな質感で指紋がめちゃめちゃ目立つらしい)
300ドルぐらいの価格帯の中国メーカーのスマートフォンは主張の激しいデザインのものも多いですが、POCO F3のホワイトは比較的シンプルなデザインなので、万人に受け入れられやすいでしょう。指紋が目立たない点も含めて、ホワイト選んで正解だったなと個人的には思っています。
ちなみに前面・背面どちらもGorilla Glass 5が採用されており、約300ドルの機種にしてはコストが掛かっています。
ボタン類は右側面に集約されています。電源ボタンには指紋センサーが内蔵されており、押し込まなくても触れるだけで指紋認証を行うことができます。電源ボタン指紋認証というとXperiaが思い浮かびますが、POCO F3はXperiaと違って電源ボタンが凹んでいないためボタンとして押しやすくなっています。押し心地も変に柔らかかったりせずしっかりとクリック感があり、指紋センサーとしての認証速度や精度もかなり良く、快適に使用できます。
左側面には何もありません。
上側面にはスピーカーと赤外線ブラスターが配置されています。赤外線ブラスターはスマートフォンをリモコン代わりに使う「Mi リモート」というアプリのために用意されており、赤外線の信号がここから送信されます。試しにSHARPのテレビで使ってみましたが、電源オンオフやチャンネル切り替え、音量調整、入力切替といった基本機能は問題なく使えました。
底面側にはUSBポートとスピーカー、SIMトレーが配置されています。SIMトレーは表裏にSIMが入るデュアルSIM仕様ですが、MicroSDには非対応です。USBポートの仕様はUSB 2.0です。
パフォーマンス:870は十分快適
POCO F3にはSnapdragon 870が採用されています。870は基本的にSnapdragon 865のクロックアップ版なので、「ちょっと性能の高いSnapdragon 865」を想像してもらえれば大体の性能はイメージできるのではないかと思います。
300〜400ドルぐらいの価格帯ではSnapdragon 600シリーズ・700シリーズを採用しているモデルも多いですが、そういったモデルは購入当初は快適でも2年後、3年後になってくると性能不足を感じる場面が出てきたりします。一方でSnapdragon 800シリーズを採用しているモデルは2年後、3年後でも割と快適に使えたりするため、そういった意味でPOCO F3がSnapdragon 870を搭載している意義は大きいです。
POCO F3を実際に使用した感想は、非常にスムーズで快適です。近年のハイエンドスマートフォンは性能が上がりすぎていてブラウジング、SNS、メッセージングアプリ、地図アプリ等の使い方であればまず性能不足にはなりません。もちろんPOCO F3でも性能不足は感じません。
もしSnapdragon 870でパフォーマンスが問題となるとすればそれはゲームですが、私は原神やウマ娘といった最近の重量級ゲームをプレイしていないので、それらのゲームの使用感についてはノーコメントです (普段プレイしていない人間がちょっとプレイしただけで「プレイできます!」とか言ってしまうことほど無責任なことはないので) 。普段プレイしているゲームとしてデレステをプレイしてみましたが、SoCの性能的には十分足りており、3Dリッチ60fpsのMVも滑らかに再生できていました。ただしMIUIとの相性が悪いっぽく、譜面と音声が次第にズレていくため、音ゲーとしてマトモにプレイすることはできませんでした。あくまでMV再生専用といった感じです。
各種ベンチマークのスクショを置いておくので、参考用にどうぞ。
カメラ:悪くはないが良くもない
POCO F3のカメラはまずまずです。撮れた写真を見て感動することはないですが、かといってガッカリすることもあまりないと思います。つまり価格相応です。
メモ用途やちょっとしたスナップであれば十分ですが、旅行に行った際など「思い出を残す」という用途であれば、もう1〜2段階カメラに力を入れている機種を選びたいところです。 (カメラ目当てでPOCO F3を買う人はいないと思いますが)
ソフトウェア:やや慣れが必要
POCO F3を含むXiaomiのスマートフォンには、Xiaomiが色々と手を加えた「MIUI」というAndroid OSが搭載されています。
LINEなどの1アカウントしかログインできないアプリを仮想的に2つインストールしてマルチアカウントが可能になる「デュアルアプリ」や、壁紙や本体設定、インストールされているアプリなどありとあらゆる設定をロック解除に使うパスコード・指紋によって切り替えることのできる「セカンド・スペース」など、独創的で便利な機能が追加されています。
一方で、例えば通知が←方向のスワイプでは消せず、→方向のスワイプのみでしか消せなかったり、ロック状態でのカメラ起動が電源ボタン2回押しではなく音量↓ボタン2回押しに変更されていたりと、標準のAndroidと作法が異なっている部分があります。これでも昔のMIUIに比べればだいぶマイルドになったほうですが、人によってはその辺で戸惑うかもしれません。 (一応、電源ボタン2回押しでもカメラが起動するように設定することはできます)
また他にも、デレステをプレイすると譜面と音声がズレたり、他にも一部のアプリがうまく動作しなかったりと、良くも悪くも標準のAndroidからガッツリ手が入れられていることによるデメリットがないわけではないです。基本的にはどのアプリも問題なく動作しますが、たまーにうまく動かないアプリがあるため、その点には留意する必要があるでしょう。
その他:スピーカーと触覚フィードバックも優秀
上記以外で特筆すべきなのが、スピーカーと触覚フィードバック (Haptic Feedback) です。
POCO F3のスピーカーは本体上部と底部の2つのスピーカーを使ったステレオ仕様となっており、動画鑑賞やゲームをする際の臨場感がシングルスピーカーの機種と比較して段違いに良いです。最近は3〜4万円程度の機種でもステレオ仕様になっているものがチラホラ出てきていますが、左右 (上部・底部) のスピーカーで音量差があったり、そもそも音質がそこまで良くなかったりと、”値段なり” なことは少なくありません。一方でPOCO F3のスピーカーは音量差も少なく、音質もスマホにしてはちゃんと低音が出ており、かなりいい線をいっています。この価格帯では最高クラスのスピーカーでしょう。
そしてもう1つ値段に見合っていないのが触覚フィードバックです。POCO F3ぐらいの価格帯では触覚フィードバックと言いつつただのバイブレーションである場合が多いですが、POCO F3には “触覚” と呼ぶことのできる、それなりに良いバイブレーション用のモーターが搭載されています。もちろんiPhoneなどと比べると明確に差はありますが、スペックシートに出ない部分にもコストを掛けているのは評価できるポイントです。
まとめ
「 “300ドルの機種ならこんなもんだろう” という予想を大きく超えてきた」というのがPOCO F3を使った感想です。Snapdragon 870によるフラグシップ級のパフォーマンス、E4発光体による高輝度・広色域なディスプレイ、臨場感があり低音も出るスピーカーなど、良い意味で価格と釣り合っていない要素が多いです。カメラが価格相応だとかMIUIのクセが強い・広告が表示されるといったトレードオフはありますが、それらを補って余りあるぐらいプラス要素が強いです。
いくら台数の出るメーカーとはいえ、これだけのものをこの値段で出せてしまうXiaomiの開発力と収益構造は流石の一言です。値段が値段なのでスペックだけ立派なスペックシート番長かと思っていましたが、実際はスピーカーやバイブレーション用モーターといったスペックに出てこない部分もちゃんと作り込まれており、 “ベンチマークのスコアが良いだけのスマートフォン” で終わっていないのがすごいところです。
「これが300ドルでいいんですか?」と思ってしまうぐらいにはよくできている1台です。他のメーカーにはちょっと真似できないレベルのコストパフォーマンスの良さだと思います。