RAVPowerブランドのUSB PD 30W対応 2ポートACアダプター「RP-PC144」を購入したので簡単にレビューします。
この記事でレビューしている製品
この記事でレビューしているのは以下の製品です。
開封・同梱品
外観・重量
重量は実測で84gでした。 (公称82g)
- RAVPower PD Pioneer 30W 2-Port Wall Charger/急速充電器
- MODEL/型番: RP-PC144
- Input/入力: 100-240V 〜 50/60Hz 0.8A
- PD Output/出力: 5V⎓3A, 9V⎓2A, 9V⎓2.22A, 9V⎓2.77A, 15V⎓2A 30W Max
- iSmart Output/出力: 5V⎓2.4A, 9V⎓2A, 12V⎓1.5A (QC 18W)
- Total Output/出力: 30W Max
- JP Importer: 株式会社 SUNVALLEY JAPAN
- Made in China
- ひし形PSEマーク / TÜV SÜD PSB Pte Ltd / 届出事業者名→??
定格出力にPPSの電圧・電流の記載がありません。必ず記載しなければならないかどうかは微妙なラインですが、PPSでは例えば3.3〜11.0Vの範囲で任意の電圧がリクエスト・出力され、必ずしも5.0V・9.0V・15.0Vが出力されるとは限らないため、PPSについても記載しておくほうが望ましいでしょう。
1ポート単独使用時の仕様をチェック (USB Type-Cポート)
RAVPower RP-PC144のUSB Type-Cポートは1ポートのみ使用している状態で、以下の充電規格・方式に対応しています。
- USB BC DCP
- USB PD
- Apple 2.4A
- Quick Charge 2.0/3.0 Class A
- Samsung Adaptive Fast Charging
- HUAWEI Quick Charge (FCP)
RP-PC144のUSB Type-Cポートは1ポートのみ使用している状態ではUSB PDで以下の電圧を出力可能です。 (最大30W)
- 5.0V⎓3.0A (Fixed)
- 9.0V⎓2.0A (Fixed)
- 9.0V⎓2.22A (Fixed)
- 9.0V⎓2.77A (Fixed)
- 15.0V⎓2.0A (Fixed)
- 3.3〜11.0V⎓3.0A (PPS)
RP-PC144は最大30W出力のため、少なくとも「5.0V⎓3.0A」「9.0V⎓3.0A」「15.0V⎓2.0A」を出力できなければなりません。しかしRP-PC144は9.0Vに関して最大2.77Aを通知しており、USB PDの仕様に違反しています。
また、9.0Vの出力 (Fixed Supply PDO) を複数通知しているのも意味不明です。このような実装にメリットは1つもありません。
PDOの電流値が示すのは「Maximum Current」、つまり「供給可能な最大の電流値」であり、これに基づいて充電される側の機器 (Sink) が何アンペア引くかコントロールします。なので、ACアダプターはそれぞれの電圧ごとに供給できる最大の電流値を1つだけ通知すれば十分……というか、最大値が2個も3個もあってたまるかという話ですが、RAVPower RP-PC144は「最大2.0Aです」「最大2.22Aです」「最大2.77Aです」と同時に通知しています。これでは何アンペアまで出力可能なのかSinkが判断することができません。
「9.0Vの出力が3.0Aに満たない」「9.0Vの出力を複数通知している」という2つは充電しているデバイスを破損させるようなものではありませんが、充電が遅いといった事象の原因になる可能性があります。
1ポート単独使用時の仕様をチェック (USB Standard-Aポート)
RAVPower RP-PC144のUSB Standard-Aポートは以下の充電規格・方式に対応しています。
- USB BC DCP
- Apple 2.4A
- Quick Charge 2.0/3.0 Class A
- Samsung Adaptive Fast Charging (AFC)
- HUAWEI Quick Charge (FCP)
2ポート同時使用時の出力をチェック
USB Type-Cポート
RAVPower RP-PC144のUSB Type-Cポートは2ポート同時使用時、以下の充電規格・方式に対応しています。
- USB BC DCP
- USB PD
- Apple 2.4A
- Quick Charge 2.0/3.0 Class A
- Samsung Adaptive Fast Charging
- HUAWEI Quick Charge (FCP)
RP-PC144のUSB Type-Cポートは2ポート同時使用時、USB PDで以下の電圧を出力可能です。 (最大20W)
- 5.0V⎓2.4A (Fixed)
- 9.0V⎓2.0A (Fixed)
- 9.0V⎓2.22A (Fixed)
- 3.3〜11V⎓2.0A (PPS)
USB PDで最大20Wを出力できる機器は少なくとも「5.0V⎓3.0A」「9.0V⎓2.22A」を出力できなければなりません。しかしRP-PC144は5.0Vに関して最大2.4Aを通知しており、USB PDの仕様に違反しています。
また、9.0Vに関して2つの電流値を通知しています。上でも説明しましたが、このような実装にメリットは皆無です。この電流値は「供給可能な最大の電流値」を示すものなので、20W出力であれば、9.0Vは2.22Aのみを通知する以外の選択肢はありません。同じ電圧に対して複数の電流値を通知するというのはありえません。
USB Standard-Aポート
RAVPower RP-PC144のUSB Standard-Aポートは2ポート同時使用時、以下の充電規格・方式に対応しています。
- USB BC DCP
- Apple 2.4A
まとめ & 所感
RAVPower RP-PC144の出力をまとめると以下の通りです。
USB Type-C出力 | USB Std-A出力 | |
---|---|---|
USB Type-Cのみ使用 | 最大30W | – |
USB Std-Aのみ使用 | – | 最大18W |
2ポート同時使用 | 最大20W | 最大12W |
このRP-PC144はオススメしません。別に製品提供を受けているわけでもないので率直に言いますが、私だったらタダでもいらないです。
これまでに色々な、それこそ数百個の製品に目を通してきましたが、こんな意味不明なPDOを持つSource_Capabilitiesメッセージを送ってくるACアダプターはこれが初めてです。まさか2021年にもなって、こんな予想の斜め上をゆくACアダプターに出くわすとは思いもしませんでした。
当サイトでは過去にもRAVPowerの製品をレビューしましたが、過去の製品から全く改善が見られないばかりか、むしろ悪化しています。9.0V⎓2.0Aや9.0V⎓2.22AはApple純正品が、9.0V⎓2.77AはSamsung純正品が通知してくるPDOですが、RAVPowerはメーカー純正品を中途半端にコピーしてUSB PD仕様違反の製品を爆誕させる行為を未だに続けているようです。仕様を守る気があるならまずしないような低レベルな仕様違反であり、設計した人間はUSB PDの仕様を1ミリも理解していない・そもそも理解する気がないとしか思えません。こんなお粗末な製品に数万〜十数万円のデバイスの命を預ける気になど到底なれないですね。
なので、私だったらこんな製品はタダでもいらないです。