一部のQuick Charge 3.0対応USB Type-C ACアダプタはケーブルを破壊する可能性があるので注意しましょう。
2021年1月 追記
この記事の内容は古いです。この記事だけでなく以下の記事も参照してください。
追記終わり
USB Type-Cとは
2014年に策定された、新しいUSBの形状です。
リバーシブルな形状であることや、今までのUSB端子よりも大きな電気を扱える(≒充電が早くなる)といったメリットがあるため、2016年に入ってから急速にAndroidスマートフォンでの採用例が増えています。
USB Type-Cを採用している機種としてはXperia XZやXperia X Compact、ZenFone 3などが挙げられます。
Quick Chargeとは
Quick Chargeとは、アメリカのQualcommという会社が策定した急速充電の規格です。
QualcommのチップはAndroidスマートフォンで圧倒的なシェアを誇っており、日本でも大半のAndroidスマートフォンがQualcommのチップを採用しています。
Qualcommのチップを採用するメリットは色々ありますが、その中の1つに “Quick Chargeという急速充電の規格に対応させることができる” というものが挙げられます。バッテリーの大容量化に伴って充電時間が長くなっているので、何かしらの急速充電規格へ対応することがほぼ必須となっているわけですね。
先ほど挙げたXperia XZやXperia X Compact、ZenFone 3もQualcommのチップを採用しており、Quick Chargeにも対応しています。
ケーブルが破壊される場合がある
Nathan K.という人がYouTubeにこのような動画を投稿しています。
要点をまとめると、「一部の粗悪なQuick Charge対応USB Type-C ACアダプタは規格以上の電圧を掛けており、eMarkerを内蔵しているタイプのUSB Type-Cケーブルと組み合わせると、そのeMakerが破損する恐れがある」とのことです。
※eMarkerとは、一部のUSB Type-Cケーブルに内蔵されているICチップです。
実際に試してみた
使用したのはAUKEYのQuick Charge 3.0対応USB Type-C ACアダプタ PA-Y2です。
Quick Chargeを有効状態にさせることができる特殊な基板を使用してQCを有効化し、その状態の時のACアダプタのCC1・CC2の電圧を測定してみたところ、以下のような状態でした。
ACアダプタのCC1・CC2はケーブルのVconn(eMarkerに電力を供給するピン)と接続するため、理論的にはケーブルのVconnにも最大12Vが掛かる恐れがあるということになります。(実際にはケーブルのRaを経てGNDに接続するので、12Vがそのまま掛かるわけではない)
Vconnの電圧は、USB Type-Cの規格で以下のように定められています。
最大5.5Vと規定されているところに約12Vの電圧が掛かるのですから、eMarkerが破損してもおかしくはありません。
これが、一部の粗悪なQuick Charge 3.0対応USB Type-C ACアダプタがケーブルを破壊する原因です。
破壊しないACアダプタもある
Quick Charge 3.0対応USB Type-C ACアダプタのすべてがeMarker内蔵ケーブルを破壊するのかというと、そうとも限りません。
例えばAnkerのQuick Charge 3.0対応USB Type-C ACアダプタ A2012111ですが、このACアダプタではQuick Chargeが有効になってもeMarkerを破壊する可能性は低いです。
AUKEY PA-Y2と同様に、Quick Charge有効時のCC1・CC2の電圧を測定してみました。
上記の画像の通り、CC1・CC2の電圧はUSB Type-Cの規格で定められている範囲内である約5Vでした。
そのため、Vconnに掛かる電圧も約5Vとなるため、例えQuick Chargeが有効になった場合でもeMarkerが破壊される可能性はほぼゼロであると考えられます。
A to Cケーブルは?
eMarkerを内蔵しているC to Cケーブルが破壊される可能性があることが分かったところで、次はA to Cケーブルに移ります。
ケーブルに搭載されているeMarkerに規定以上の電圧が掛かって破損する恐れがあることがこの問題の本質なわけですが、そもそもA to CケーブルにeMarkerは搭載されているのでしょうか。USB Type-Cの仕様書には以下のようにワイヤリングの概要が記載されています。
この表を見てみると、Vconnの欄は空白となっています。つまり、A to CケーブルにおいてVconnは開放であるということになります。
このことが何を意味しているかというと、全てのA to CケーブルにはeMarkerが搭載されていないことを表しています。(上記の表はUSB 2.0のものですが、3.1も同様に開放となっています)
当然、eMarkerが搭載されていなければそもそも損傷するという問題が発生しないので、A to Cケーブルに関してはケーブルが破損する可能性を心配しなくても良いということになります。 (Quick Charge 3.0自体はUSB Type-Cの規格に沿っていませんが)
所感
AUKEY PA-Y2のような例は論外ですが、ケーブルを破壊しない形で実装しているのであれば、QC3.0などを実装するのは他社製品との差別化や付加価値的な面で仕方ないのかなー、という感じがします。
まぁ、そもそもUSB Type-CのスマホにQC3.0を対応させるなという話なんですが……