Anker Nano II 30W レビュー:スマホ用としてはオススメ、ノートPCに使うのはやめとけ

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AnkerのUSB PD 30W充電器「Nano II 30W」 (型番: A2655N11) を購入したのでレビューします。

これは何?

USB充電器やケーブルなどを多数リリースしている周辺機器メーカー「Anker」が2021年7月に発売した、USB PD 30W対応のACアダプターです。

スイッチング素子に従来のSi (シリコン) ICではなくGaN (窒化ガリウム) ICを使用しており、非常にコンパクトなことが特徴です。

また、機能的な面ではUSB PD PPSに対応しているため、「Quick Charge 4 / Quick Charge 4+」に対応しているスマートフォンや、「Super Fast Charging」に対応しているGalaxy S20・S21・Note10・Note20シリーズを超急速充電することが可能な点も売りの1つとなっています。

開封・付属品

今回私はAmazonでマーケットプレイス出品者「AnkerDirect」から購入しましたが、恐らく店頭販売用と思われる、コストの掛かってそうなパッケージのものが届きました。購入時期によってはもっとシンプルなパッケージのものが届くかもしれません。

パッケージに入っているものはACアダプター本体とマニュアルのみです。ケーブルは付属しません。

Nano II 30W 充電器
Model/品番: A2665
Input/入力: 100-240V-1A 50-60Hz
Output/出力: 5.0V⎓3.0A 15.0W / 9.0V⎓3.0A 27.0W / 15.0V⎓2.0A 30.0W / 20.0V⎓1.5A 30.0W
PPS: 3.3-11.0V⎓3.0A Max (30.0W Max) / 3.3-16.0V⎓2.0A Max (30.0W Max)
Anker Innovations Limited
Made in China
ひし形PSEマーク / アンカー・ジャパン株式会社 / TÜV SÜD PSB Pte Ltd

重量

重量は48gでした。 (公称47g)

外観・サイズ比較

製品前面にはUSB Type-Cポートが1つあり、背面にはコンセントプラグが配置されています。プラグは折りたたみ不可です。

寸法は、高さが3.0cm、幅が3.2cm、奥行きが3.8cm (プラグ含まず) / 5.4cm (プラグ含む) です。

他の製品と並べてみました。左から、iPhone付属の5W USB電源アダプタ、Anker Nano II 30W、Apple 30W USB-C電源アダプタです。

Anker Nano II 30WはApple 5Wと同じ……とまでは言いませんが、Apple 5Wより一回り大きい程度のサイズに収まっています。同じ30W出力のApple 30Wと比較すると、かなりコンパクトです。

電源タップや壁のコンセントに挿した場合、Apple 30Wは隣のコンセントまで塞いでしまいますが、Anker Nano II 30Wであれば塞ぐことはありません。

対応している急速充電規格を確認

AVHzY CT-3を使って、Anker Nano II 30Wが対応している急速充電規格とSource_CapabilitiesメッセージのPDOを確認してみました。

AVHzY CT-3 (Shizuku) レビュー
ACアダプターが対応している急速充電規格を検出したり、対応するUSB PDの電圧・電流の組み合わせを表示することのできるAVHzY CT-3 (Shizuku) を購入したので、機能や使い勝手などを簡単にレビューします。

まず急速充電規格ですが、

  • USB BC DCP
  • USB PD
  • Apple 2.4A
  • Quick Charge 2.0/3.0

に対応しています。

Apple 2.4AやQC 2.0/3.0に対応しているので厳密にはUSB Type-Cの仕様に違反していますが、CCに印加される電圧はUSB Type-Cの仕様の範囲内なので、実用上で何か問題となる可能性は低いでしょう。 (後述のNextbit Robinの充電を参照)


USB PDの出力は以下の6系統に対応しています。

  • 5.0V⎓3.0A (Fixed)
  • 9.0V⎓3.0A (Fixed)
  • 15.0V⎓2.0A (Fixed)
  • 20.0V⎓1.5A (Fixed)
  • 3.3V-11.0V⎓3.0A (PPS)
  • 3.3V-16.0V⎓2.0A (PPS)

PDO 5の理論上の最大出力は11.0V x 3.0A = 33.0W、PDO 6の出力は16.0A x 2.0A = 32.0Wなので、定格出力である30Wを超えています。一見すると問題があるように思えますが、実際は問題ありません。

USB PD Specification Revision 3.0, Version 2.0

PPSのPDO (APDO) の28ビット目 (B27) には「PPS Power Limit」という項目が割り当てられており、このビットが有効になっている場合、供給される電流はPD Power (今回の場合は30W) を超えないように制限されます。

PDO 5とPDO 6を両方調べましたが、どちらもPPS Power Limitのフラグが立っていました。そのため、数字上はPDO 5とPDO 6がどちらも30Wを超えていますが、問題はありません。

いろいろ充電してみた

Galaxy S20 FE

Super Fast Charging 25W対応のGalaxy S20 FEを充電したところ、PPS 3.3V-11.0V⎓3.0AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約25Wが供給されていました。

Redmi K20 Pro

Quick Charge 4+対応のRedmi K20 Proを充電したところ、PPS 3.3V-11.0V⎓3.0AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約25Wが供給されていました。

iPhone XR

iPhone XRを充電したところ、Fixed 9.0V⎓3.0AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約15Wが供給されていました。

Nextbit Robin

USB PD非対応・Quick Charge 2.0対応のNextbit Robinを充電したところ、Quick Charge 2.0が有効になり、約14Wが供給されていました。

iPad Pro 11 (2021)

iPad Pro 11 (2021) を充電したところ、Fixed 15.0V⎓2.0AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約28Wが供給されていました。

iPad Air 2

USB PD非対応のiPad Air 2を充電したところ、Apple 2.4Aが有効になり、約12Wが供給されていました。

MacBook Air (M1, 2020)

MacBook Air (M1, 2020) を充電したところ、Fixed 20.0V⎓1.5AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約29Wが供給されていました。

ThinkPad Yoga 370

ThinkPad Yoga 370を充電したところ、USB PDのネゴシエーションが正常に行われず、電圧が5Vのままでした。 (通常は15Vか20Vになる)

詳しくはこの記事にまとめましたが、充電できないのはThinkPad Yoga 370 (に採用されているUSB PDコントローラー) が原因であり、Anker Nano II 30Wは原因ではない可能性が高いです。

Nintendo Switch (2019)

Nintendo Switch (2019) を充電したところ、Fixed 15.0V⎓2.0AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約15Wが供給されていました。

純正ドックを使って外部モニターに接続してみましたが、TVモードは有効になりませんでした。 (TVモードの動作には39W以上のACアダプターが必要なため)

過電流保護機能・発熱をチェック

Anker Nano II 30Wには過電流保護機能が実装されており、5V・9V時は約3.9A、15V時は約2.7A、20V時は約2.0Aを超えると出力が自動でシャットダウンされます。デバイスが再接続されるまでVBUSの出力はオフになったままです。

1つ気になったのが発熱です。20Wぐらいの負荷であればそこまで熱くなりませんが、30Wマックスで負荷を掛け続けると結構熱くなります。ヤケドするほどではないものの、素手では触り続けられない程度には熱かったため、60〜70℃にはなっていそうな雰囲気でした。夏になって室温が上昇していることを考慮してもかなり熱かったため、発熱については注意が必要です。

まとめ

スマホ用充電器としては悪くないと思いますが、ノートPC用としてはオススメしません。理由は、一部のWindowsノートPCと互換性の問題があるという点、そして発熱です。

まず最初のWindowsノートPCとの互換性問題ですが、この記事でまとめたように、Anker Nano II 30Wは仕様的に一部のWindowsノートPCを正常に充電できない可能性が高いため、WindowsノートPC用に買うのはやめたほうが良いです。もし正常に使えたとしても30Wでは出力不足になるケースも多いため、そもそもノートPCにあまり向かないです。

もう1つの発熱については文字通りです。サーモカメラを持ってないので具体的な温度は分かりませんが、30Wマックスで負荷を掛け続けるとかなり熱くなっていました。ノートPCで使うと30Wで負荷が掛かり続けるため、当然アツアツになります。


こういった理由からノートPC用としてはオススメしませんが、スマートフォン用であれば話は別です。なぜかと言うと、スマートフォンは25W以下での充電となる場合がほとんどであり、素手でさわれる程度に発熱が収まるからです。

Anker Nano IIはUSB PD PPSに対応しているためGalaxy S20・S21・Note10・Note20シリーズやQuick Charge 4/4+対応スマートフォンを超急速充電することができますし、Quick Charge 2.0/3.0にも対応しているのでXperia XZのような「USB Type-CだけどUSB PD非対応のスマホ」も急速充電することができます。また、当然ながらAndroidだけでなくiPhoneも急速充電できます。

また、特筆すべきはそのサイズです。USB PD PPS対応のACアダプターは今まで60W程度のものがほとんどであり、スマートフォン用としてはどれも大きすぎました。これに対してAnker Nano II 30WはiPhone付属の5W充電器より一回り大きい程度のサイズに収まっており、USB PD PPS対応ACアダプターとしてはかなり小型です。

このようにAnker Nano II 30Wは

  • 超急速充電
  • 小型

という2つを両立しているACアダプターです。ノートPCには向きませんが、スマートフォンを充電するのであれば選択肢の1つに入れて良いACアダプターだと思います。