Innergieブランドの2ポート USB-C ACアダプター「Innergie C3 Duo」を入手したのでレビューします。
これは何?
Innergie C3 Duoは、USB Type-Cポートを2つ備えた、最大30W出力のUSB PD対応ACアダプターです。
Innergieという名前に聞き覚えがない人もいるかと思いますが、Innergieは世界的な電源装置メーカー「Delta Electronics (デルタ電子) 」の一般向け充電器ブランドです。DeltaのACアダプターはAppleやDell、Lenovo、HP、任天堂、Sonyなど様々なメーカーに採用されており、Nintendo SwitchやPS5のACアダプターなんかもDeltaが供給していたりします。
当サイトでは以前、「Innergie C6 Duo」というACアダプターをレビューしましたが、今回レビューするC3 Duoはその弟分のモデルです。C6 Duoは最大60Wでしたが、C3 Duoは最大30Wに出力がダウンした代わりに小型・軽量化しています。
開封
付属品は説明書のみで、ケーブルは付属してきません。ケーブルを持っていない場合は別途用意する必要があります。
私は以下のケーブルをよく使っています。USB PD 60W対応のUSB-IF Certifiedケーブルです。
Innergie / A brand of Delta
AC/DC adapter
Model: ADP-30KW B
Input: 100-240V〜1.0A 50-60Hz
Single Output: 5.0/9.0/12.0/15.0/20.0V ⎓ 3.0/3.0/2.5/2.0/1.5A, 15.0W / 30.0W max
Dual Output: 5.0V ⎓ 2.4A + 5.0V ⎓ 2.4A, 24.0W max
DELTA ELECTRONICS, INC.
Made in China
PSEマーク: ひし形 / TÜV RT / デルタ電子株式会社
“Single Output” にPPSの出力が記載されていませんが、PPSでは5V, 9V, 12V, 15V, 20V以外の電圧も出力されうるので、PPSの出力も記載したほうが良いです。
また、詳しくは後述しますが、 “Dual Output: 5.0V ⎓ 2.4A + 5.0V ⎓ 2.4A” と記載されているのに対して、充電される側の機器から5.0V ⎓ 3.0A + 5.0V ⎓ 3.0Aと認識されるような実装となっており、定格表示と製品実装が食い違っています。
外観・サイズ・重量
サイズは、高さが4.2cm、幅が3.0cm、奥行きが4.5cmです。 (プラグ折りたたみ時)
重量は68gでした。 (公称70.5g)
対応する急速充電規格をチェック (1ポートのみ使用)
AVHzY CT-3を使って、Innergie C3 Duoが対応している急速充電規格を確認しました。
※写真は片方のポートのものしか載せていませんが、対応している急速充電規格やUSB PDの出力は2つのポートどちらも同じです。
AVHzY CT-3によると、USB BC DCPに加えてApple 2.4Aにも対応しているようです。念のためD+/D-の電圧を確認しましたが、ともに2.7Vだったので検出結果は正しいです。
USB Type-Cの仕様は、USBが定める方式以外で電力のハンドシェイクを行うことを禁止しているため、Apple 2.4Aに対応しているのは厳密にはUSB Type-C仕様違反です。とはいえ、C3 Duoは5Vでは3Aまで出力できるので、実用上で特に何か問題になることはないでしょう。
USB PDの出力は以下の6系統に対応しています。
- 5.0V⎓3.0A (Fixed)
- 9.0V⎓3.0A (Fixed)
- 12.0V-2.5A (Fixed)
- 15.0V⎓2.0A (Fixed)
- 20.0V⎓1.5A (Fixed)
- 5.0V-11.0V⎓3.0A (PPS)
PPS出力時、単純計算では最大11.0 (V) x 3.0 (A) = 33.0 (W) まで達することになりますが、PPS Power Limitのフラグが立っており、PD Power (今回だと30W) を超えないように制限されるため、仕様的に問題はありません。
いろいろ充電してみた (1ポートのみ使用)
Galaxy S20 FE
Galaxy S20 FEを充電したところ、最大で約26Wが供給されていました。
ただし、最大25WのSamsung Super Fast Charging規格 (日本語だと “超急速充電” ) で充電できていたのは充電開始後、最初の5〜10分程度だけでした。
USB PDのパケットを確認したところ、発生するタイミングはその時によって多少前後するものの充電開始5〜10分後にリセットが発生しており、リセット後はUSB PD 9V Fixedによる15W程度での充電になっていました。2ポート両方で複数回試しましたが、100%発生しました。
ハッキリとした原因は不明なものの、他のACアダプターでは終始Super Fast Chargingで充電できているため、Innergie C3 Duo側に原因がありそうな気配がします。
なお、USB PD 9V Fixedによる充電になった後も画面上の表示は「超急速充電」のままなので、表示が「超急速充電」か「急速充電」かでこの事象が発生しているかどうかは判別できません。USB PDのパケットを確認する必要があります。
iPhone XR
iPhone XRを充電したところ、約13Wが供給されていました。
Nextbit Robin
USB PD非対応・Quick Charge 2.0対応のNextbit Robinを充電したところ、約8Wが供給されていました。
iPad Pro 11 (2021)
iPad Pro 11 (2021) を充電したところ、約27Wが供給されていました。
ThinkPad Yoga 370
ThinkPad Yoga 370を充電したところ、約28Wが供給されていました。
Nintendo Switch (2019)
Nintendo Switch (2019) を充電したところ、約15Wが供給されていました。
対応する急速充電規格をチェック (2ポート同時使用)
今までは1ポートのみを使用した場合の挙動を確認しましたが、次は2ポート同時に使用した場合の挙動を確認します。
2ポート同時使用している場合では以下の充電規格に対応します。
- USB BC DCP
- Apple 2.4A
2ポート同時使用時はUSB PDには非対応です。
また、2ポート同時使用時は1ポートあたり最大15W、2ポート合計で最大24WというのがInnergie C3 Duoの公称スペックですが、実際の製品実装と一致していません。
2ポート同時使用時のUSB Type-CポートのCCピンの電圧を確認すると、どちらのポートもUSB Type-C Current 3Aの電圧となっていました。そのため、対応しているデバイスからは最大15W (5.0V ⎓ 3.0A) 対応と認識されます。
1ポートあたり15Wということは、2ポート合計では最大30Wの負荷が掛かることになり、最大24Wというスペックと一致しません。もし本当に最大24Wというスペックなのであれば、片方のポートに7.5W以上の負荷が掛かっている場合、もう片方のポートのRpの値をUSB Type-C Current 1.5AまたはDefault USB Powerのものに変更しなければ24Wをオーバーしてしまいますが、C3 Duoはそのような動作をしていませんでした。
Innergie C3 Duo自体は定格30Wなのと、1ポートあたり15Wまで出力できるようなので、15W + 15Wの負荷が掛かっても安全性には問題ないとは思いますが、公称スペックと製品実装が一致していないのは良くないです。
いろいろ充電してみた (2ポート同時使用)
Galaxy S20 FE + iPhone XR
Galaxy S20 FEとiPhone XRを同時に充電したところ、Galaxy S20 FEに約5W、iPhone XRに約7.5Wが供給されていました。
Galaxy S20 FE + Nintendo Switch (2019)
Galaxy S20 FEとNintendo Switch (2019) を同時に充電したところ、Galaxy S20 FEに約5W、Nintendo Switchに約9Wが供給されていました。
iPad Pro 11 (2021) + iPhone XR
iPad Pro 11 (2021) とiPhone XRを同時に充電したところ、iPad Pro 11に約14W、iPhone XRに約10Wが供給されていました。
ThinkPad Yoga 370 + iPhone XR
ThinkPad Yoga 370とiPhone XRを同時に充電したところ、ThinkPad Yoga 370に約2.5W、iPhone XRに約7.5Wが供給されていました。
※ThinkPad Yoga 370に約2.5Wしか供給されていませんが、ThinkPad Yoga 370はどのACアダプターでもUSB PD非対応だと2Wぐらいしか引かないので、これは正常です。
USB-C – Lightningケーブルを使用している場合
片方のポートにUSB-C – Lightningケーブルが接続されている場合、たとえデバイスが接続されていなくてもInnergie C3 Duoからはデバイスが接続されていると認識され、もう片方のポートが最大15W出力となり、USB PDにも非対応となります。
これはUSB Type-Cの仕様上どうしようもない現象であり、C to Cケーブルであれば起きないので、苦情はLightningをやめないAppleに言ってください。
Innergie C6 Duoと比較してみる
最後に、兄弟モデルのInnergie C6 Duoと簡単に比較してみます。
モデル | 高さ | 幅 | 奥行き | 重量 |
---|---|---|---|---|
C6 Duo | 4.7cm | 3.0cm | 5.6cm | 140g |
C3 Duo | 4.2cm | 3.0cm | 4.5cm | 68g |
サイズ的にはそこまで大きな差はなく、C3 Duoが一回り小さい程度です。
一方で重量はかなり差があり、C6 Duoは140gなのに対して、C3 Duoは半分以下の68gとなっています。体感的にも、C6 Duoは割と重量感がありますが、C3 Duoはヒョイと持ち上げられます。毎日持ち歩いても苦にならないでしょう。
まとめ
Good
- 定格30W・2ポートの割に小型・軽量
- コンセントプラグ折りたたみ可能
Bad
- 2ポート同時使用時にUSB PD非対応
- 2ポート同時使用時の公式スペックと実際の製品実装が一致していない
Innergie C3 Duoは「小型・軽量でUSB Type-Cポートが2つある」というのがセールスポイントだと思いますが、その2つのUSB Type-Cポートを同時に使用した場合にUSB PD非対応となるのが非常に惜しいです。というのも、同じ「15W」であっても、その15WがUSB Type-C Current 3AなのかUSB PDなのかによって、実際の充電速度が大幅に変わるケースが多いからです。
詳細は上に書きましたが、iPhoneやiPad、Galaxyスマートフォン、ノートPC、Nintendo Switch等のうち、2ポート同時使用時に15Wが供給されていたのはiPad Pro 11のみでした。USB PDのパケットさえしゃべってくれればiPhoneやGalaxyも15W程度で充電された可能性が高いですが、実際はUSB PD非対応となるため、5〜10W程度での充電となっていました。
そのため、このInnergie C3 Duoは「2台同時に急速充電したい」という人には向きません。2台同時に急速充電したいのであればInnergie C6 Duoの方が良いです。
逆に、「一晩中充電器に挿しっぱなしなので充電速度は気にしません」という人で、電源大手のデルタ電子製というところや、サイズや重量に魅力を感じるのであれば、Innergie C3 Duoもアリかもしれません。