PowerIQ 3.0はUSB PDの仕様に違反している (少なくとも今のところは)

AnkerのPowerIQ 3.0がUSB Type-C・USB PDの仕様に違反している件について解説します。

タイトルに「今のところは」と入っているのは、今後、AnkerがPowerIQ 3.0という名称を使い続けたまま製品の仕様を変更する可能性を考慮してのことであり、それ以上の深い意味はありません。

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今回使用したPowerIQ 3.0製品

今回は以下のPowerIQ 3.0 ACアダプタ 2モデルを用意しました。

どちらもPowerIQ 3.0が謳われており、PowerPort Atom III (Two Ports) はUSB Type-Cポートから最大45Wを、PowerPort Atom III 60Wは最大60Wを出力できるとされています。

2製品のUSB Type-Cポートの仕様を確認

早速、PowerPort Atom III (Two Ports) とPowerPort Atom III 60WのUSB Type-Cポートの仕様を確認していきます。

PowerPort Atom III (Two Ports)

PowerPort Atom III (Two Ports) のUSB Type-Cポートは、USB PD以外に「USB BC 1.2 DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」に対応しています。

そして、USB PDは「5.0V/2.4A」「9.0V/3.0A」「15.0V/3.0A」「20.0V/2.25A」の出力に対応しています。

PowerPort Atom III 60W

PowerPort Atom III 60Wは、USB PD以外に「USB BC 1.2 DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」に対応しています。

そして、USB PDは「5.0V/2.4A」「9.0V/3.0A」「15.0V/3.0A」「20.0V/3.0A」の出力に対応しています。

PowerIQ 3.0に共通する特徴

PowerPort Atom III (Two Ports) とPowerPort Atom III 60Wを調べた結果、以下の特徴が共通していることが分かりました。

  • USB PDに加えて「USB BC 1.2 DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」に対応している
  • USB PDは5.0Vの出力が2.4Aとなっている

私が調べたものではありませんが、PowerPort III miniPowerPort Atom III SlimPowerPort Atom III Slim (Four Ports) PowerPort III Nanoでも同様の報告がされています。

 
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何がどのように違反しているのか

PowerIQ 3.0の特徴を踏まえ、どこがどのようにUSBの仕様に違反しているのか説明していきます。

USB Type-Cの仕様では

2017年7月に公開されたUSB Type-C, Release 1.3以降、USB Type-Cを備えた製品について、電力のネゴシエートにはUSBの仕様で定義されている信号の方式のみを実装するように定められています。平たく言うと、USB Type-C製品にUSB以外の充電規格を実装するのは禁止されているということです。

4.8.2 Non-USB Charging Methods

A product (Source and/or Sink) with a USB Type-C connector shall only employ signaling methods defined in USB specifications to negotiate power over its USB Type-C connector(s).

USB Type-C Cable and Connector Specification. Release 1.3

“shall” なので必ず従わなければなりません。

しかしながら「Apple 2.4A」や「Quick Charge 2.0/3.0」といった規格にも対応しているため、PowerIQ 3.0はUSB Type-Cの仕様に違反しているということになります。

USB PDの仕様では

USB PDには「パワールール」というものが規定されており、そこでは5Vの出力について以下のように記載されています。

USB Power Delivery Specification, Revision 3.0, Version 2.0

これだけ見せられても何のことか分からないかもしれませんが、重要なのは「15W以上出力できる場合、5Vでは最低3Aの電流値を通知しなければならない」という点です。これも “shall” であるため、必ず従う必要があります。

しかしながらPowerIQ 3.0は5.0V/2.4Aを通知するため、USB PDの仕様に違反しています。

PowerIQ 3.0による実害・デメリット

ということで、PowerIQ 3.0のどの部分がどのようにUSB Type-C・USB PDの仕様に違反しているのかを説明しました。続いて、その仕様違反によってどのようなデメリットがあるか説明していきます。

「USBの仕様に違反している」と知って、まず気になるのが「接続した機器が壊れるのか!?」的なことだと思いますが、この点については心配しなくても大丈夫でしょう。違反しているのは主に互換性に関わる項目なので、PowerIQ 3.0製品に接続したとしても故障するような可能性は低いです。メーカーもそんなものを世に出したら評判ガタ落ちなので、さすがにそんな真似はしないでしょう。

では何が問題なのかというと、「互換性」です。先程も言ったように、PowerIQ 3.0は互換性に関わる項目に違反しています。その結果、実際に一部のデバイスでは充電できないという事態が発生しているようです。

このように全く充電できないというパターンや、他にも5Vで充電されるスマートフォンが最高速度で充電されないパターンなど、USB PD対応製品として互換性が低いというのがPowerIQ 3.0のデメリットです。

まとめ

  • PowerIQ 3.0はUSB Type-Cの仕様に違反している
  • USB PDの仕様にも違反している
  • 接続したデバイスを故障させる可能性は低い
  • USB PD対応製品として互換性が低い
  • 実際に、PowerIQ 3.0のACアダプタでは一部のデバイスが充電できない
  • 充電できたとしても充電速度が遅い場合もある
 
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詳しい人向けの補足

※ある程度知識がある人に向けてのフォローというか補足なので、何言ってるか分からなかったら読まなくても問題ありません。

「互換性が低い」という指摘に対して、ある程度知識のある人は「いやQuick Chargeにも対応してるんだからPowerIQ 3.0の方が互換性高いやろ!」とツッコミを入れたくなるかもしれません。

確かにそれはその通りで、「Quick Charge対応製品も急速充電できる」という意味ではUSB PDにしか対応していない製品よりもPowerIQ 3.0製品の方が互換性が高いです。その一方で、PowerIQ 3.0はUSB PDのパワールールを守っておらず、USB PDの仕様に準拠した製品よりも互換性が低いというのも事実です。

Quick Charge 2.0/3.0とUSB PDは全く別の手段でネゴシエートする充電方式のため、USB Type-C仕様違反という点に目をつぶれば両立させることは可能です (Quick Charge 4+対応ACアダプタなど) 。しかし現実のPowerIQ 3.0はUSB PDのパワールールを守っていない仕様となっています。急速充電できるデバイスを増やしたいのであればパワールールに準拠したままQuick Chargeにも対応すればよかったのに、なぜかこのような仕様となっているため、「USB PD対応製品として互換性が低い」という表現にしています。

この記事について

この記事で使用しているPowerPort Atom III (Two Ports) [A2322121]PowerPort Atom III 60W [A2613121]は、Amazon.co.jpのマーケットプレイス販売者「AnkerDirect」から、当サイトの管理人が購入したものです。

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