AnkerのPowerIQとは - PowerIQ 2.0・PowerIQ 3.0との違いも詳しく解説

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Ankerの充電器やモバイルバッテリーでよく目にする「PowerIQ」。製品の説明を読むと「Ankerの独自技術」だとか「接続された機器を自動で判別してフルスピード充電」などと書いてあって何やらすごそうな雰囲気だけは伝わってくるものの、結局よく分からないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、そのAnkerのPowerIQについて詳しく解説します。

PowerIQとは何なのか

PowerIQとは「接続されているデバイスに応じて適切な充電規格で充電してくれる機能」です。これだけだと「何言ってるか訳わかんねーわ」って感じだと思うので、もう少し詳しく説明します。

スマートフォンの充電には、USB系の規格、Appleの独自規格、Qualcomm Quick Chargeなど様々な充電規格があります。しかし、どの規格に対応しているかは機種によって異なるため、例えばiPhoneを急速充電できる充電器がAndroidスマートフォンを急速充電できるとは限りません。

そんな時に役に立つのがPowerIQです。PowerIQ搭載の充電器やモバイルバッテリーは複数の充電規格に対応していて、「このデバイスはどの充電規格に対応しているか」ということを自動で判別し、その判別した結果に応じて適切な充電規格で充電を行ってくれます。

そのため、PowerIQ搭載の充電器やモバイルバッテリーはどんなデバイスもそれなりの速度で充電してくれる利点があります。

PowerIQは充電の規格ではない

Ankerの説明文を読むとPowerIQのことを充電規格の1種だと勘違いしやすいですが、PowerIQは充電の規格ではありません

PowerIQとは「色々な充電規格に対応しており、その中から最も早く充電できる規格で充電してくれる」という機能です。あくまでも充電規格を利用するための機能であり、充電の規格そのものとは別物となります。

紛らわしいところですが、PowerIQは充電規格ではありません。

PowerIQとVoltageBoostは無関係

もう1つ混同されやすいのが「VoltageBoost」です。

VoltageBoostとは、出力する電圧を0.2V程度盛ることによって充電を早める1種の小細工・テクニックです。スマートフォンが普及し始めた頃は、今と比べて低品質なUSBケーブルが少なくありませんでした。低品質なケーブルは電圧降下が大きいため、充電器から出力された時点では5.0Vなのにスマートフォンに届く頃には4.8Vぐらいに電圧が下がってしまい、充電が微妙に遅くなってしまうことがあります。

そのような低品質なケーブルへの対策として有効なのがVoltageBoostです。充電器側で少し電圧を盛って出力することによって、ケーブルで多少電圧が降下したとしても充電スピードが遅くなりません。この「充電器側で少し電圧を盛って出力すること」をAnkerはVoltageBoostと呼んでいます。

このように、VoltageBoostとは充電スピードを早める一種の小細工・テクニックであり、PowerIQや充電規格とは何の関係もない全くの別物です。今は昔と比べてケーブルの品質もマシになっていますし、VoltageBoostの有無は気にしなくて良いでしょう。

フルスピード充電 ≠ 最速充電

話をPowerIQに戻します。

PowerIQを搭載している充電器やモバイルバッテリーの商品説明でよく見るのが「フルスピード充電」という単語です。

「フルスピード」と言われると「PowerIQで充電すれば最高速度で充電してくれるんだ!」と思いがちですが、PowerIQによる充電が必ずしも最速の充電というわけではありません

どういうことか説明します。上でも説明しましたが、PowerIQを搭載している充電器・モバイルバッテリーは

  • 複数の充電規格に対応している
  • 「このデバイスはこの充電規格に対応している」ということを自動で判別する
  • 判別した結果に応じて、対応している規格の中から最も早く充電できる規格で充電を行う

という動作によって “フルスピード充電” を行ってくれます。

問題は、PowerIQが対応していない充電規格が必要な場合です。

例えばスマートフォンが低速な規格Aと高速な規格Bに対応していたとして、PowerIQ搭載の充電器・モバイルバッテリーが低速な規格Aと高速な規格Cにしか対応していなかったとします。この組み合わせで充電した場合、使用される充電規格は低速なAとなってしまいます。

規格A (低速)規格B (高速)規格C (高速)
スマートフォン
充電器
モバイルバッテリー
スマートフォン・充電器の両方が対応しているのは低速な規格Aのみ

確かにPowerIQを搭載した充電器・モバイルバッテリーは、多くの場合で急速充電を行ってくれます。しかしそれは充電器・モバイルバッテリーがスマートフォンと同じ充電規格に対応している場合のみです。当たり前ですが、対応していない規格で急速充電することはできません。

そのため、「フルスピード充電」という単語に惑わされることなく、「自分が必要としている規格に対応しているかどうか」で充電器・モバイルバッテリーを選ぶことが重要となります。

PowerIQ・PowerIQ 2.0・PowerIQ 3.0が対応している充電規格

これまで「PowerIOとは何なのか」ということを説明してきました。

PowerIQとは、

  • 複数の充電規格に対応している
  • 「このデバイスはこの充電規格に対応している」ということを自動で判別してくれる
  • 判別した結果に応じて、対応している規格の中から最も早く充電できる規格で充電を行ってくれる

という機能です。そのため、充電器やモバイルバッテリーが「どの充電規格に対応しているのか」ということが重要となります。

しかしながら、Ankerはどの製品も「ほぼ全てのUSB機器をフルスピード充電」といった曖昧な説明しかせず、実際にどの充電規格に対応しているのか明記していません。これではどれを選べばよいのか分からないため、実際のPowerIQ搭載製品を使って、それぞれがどの充電規格に対応しているのか調べました。

※以下の調査結果はあくまで私が調べた範囲のものであり、同じPowerIQバージョンの製品であってもモデルによって対応している充電規格が異なる可能性があります

PowerIQ

まず調べたのは「PowerPort I PD [A2056511]」です。このACアダプターはUSB Standard-AポートがPowerIQを搭載しています。

AVHzY CT-2 (Kotomi Premium) という、対応している充電規格を検出してくれるツールを使って調べました。

AVHzY CT-2によると、PowerIQは「Apple 2.4A」に対応しているようです。また、AVHzY CT-2では検出されていませんが、実際にはUSB BC DCPにも対応しています。 (AVHzY CT-2は時々USB BC DCPを検出しそこねる)

USB BC DCPというのはAndroid・iPhoneの両方が対応している充電規格です。ただし充電速度が遅いため、他の急速充電規格に対応していない場合にのみ使用されます。

Apple 2.4AはApple独自の充電規格で、iPhoneをそこそこ高速に充電することができます。 (最速ではない)

PowerIQ 2.0

次はPowerIQ 2.0です。

使ったのは「PowerPort Atom III (Two Ports) [A2322121] 」で、このACアダプターのUSB Standard-AポートがPowerIQ 2.0を搭載しています。

AVHzY CT-2によると、PowerIQ 2.0は「USB BC DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」「HUAWEI FCP」「Samsung AFC」に対応しているようです。

USB BC DCPとApple 2.4AはPowerIQで説明したので飛ばします。

Quick Charge 2.0/3.0は、かつてAndroidで数多く採用された規格です。有名なので知っている人も多いと思います。電圧を9Vや12Vに昇圧して急速充電します。

HUAWEI FCPはHUAWEI独自の急速充電規格です。HUAWEIにはSuperChargeという超急速充電規格もありますが、FCPはSuperChargeより1世代古い急速充電規格となります。Quick Charge 2.0と同様に電圧を9Vや12Vに昇圧して急速充電します。

Samsung AFCはGalaxyスマートフォン用の充電規格です。ただし日本で販売されたGalaxyスマートフォンでAFCに対応している機種は基本的にQC 2.0にも対応しているため、実際にSamsung AFCを利用する場面は少ないでしょう。これもQuick Charge 2.0と同様に、電圧を9Vや12Vに昇圧して急速充電します。


iPhoneを充電する場合はPowerIQと同等のため、わざわざPowerIQ 2.0を使う意味はありません。 (むしろPowerIQより遅い)

それに対して、Androidスマートフォンを充電する場合はPowerIQ 2.0は有効です。Quick ChargeやHUAWEI FCPに対応しているため、かなり多くのAndroidスマートフォンを急速充電することができます。

ただし、2019年以降にリリースされたAndroidスマートフォンはQuick Chargeに対応していない機種が多いため、PowerIQ 2.0で急速充電できるのはちょっと古めのスマートフォンのみとなります。2019年以降に発売されたスマートフォンを充電する場合は、後述のPowerIQ 3.0 (Gen2) をオススメします。

PowerIQ 3.0

次はPowerIQ 3.0です。

使ったのはPowerIQ 2.0を調べたのと同じ「PowerPort Atom III (Two Ports) [A2322121] 」です。USB Type-CポートがPowerIQ 3.0を搭載しています。

PowerIQ 3.0は「USB PD」「USB BC DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」に対応しているようです。

PowerIQ 2.0と比較して、USB PDに対応した代わりにHUAWEI FCPとSamsung AFCの対応しなくなっています。

詳しくは以下の記事で説明していますが、PowerIQ 3.0はUSB PDの仕様に違反しており、充電が遅かったり充電できない場合があるため、避けたほうが良いです。PowerIQ 3.0 (Gen2) の方をオススメします。

PowerIQ 3.0はUSB PDの仕様に違反している
AnkerのPowerIQ 3.0がUSB Type-C・USB PDの仕様に違反している件について解説します。

PowerIQ 3.0 (Gen2)

最後はPowerIQ 3.0 (Gen2) です。

「USB PD」「USB BC DCP」「Apple 2.4A」「Quick Charge 2.0/3.0」に対応している点はPowerIQ 3.0と変わりがありませんが、USB PDの5Vの出力が2.4Aから3.0Aになり、USB PDの仕様に適合する形になっているのが大きな違いとなります。

USB PD対応のため最新デバイスを急速充電できる一方で、Quick ChargeやApple 2.4Aにも対応していて古いデバイスも急速充電できるため、2020年の今から買うのであればPowerIQ 3.0 (Gen2) が良いでしょう。

Anker PowerPort III 65W Pod レビュー : USB PD充電器に迷ったらこれを買うべし (2020)
PowerIQ 3.0 (Gen2) を搭載しているAnkerのUSB PD 65W充電器「PowerPort III 65W Pod (型番: A2712121) 」を購入したのでレビューします。

まとめ

ということで、「PowerIQとは何なのか」「PowerIQ・PowerIQ 2.0・PowerIQ 3.0の違い」について解説しました。

PowerIQとは、

  • 複数の充電規格に対応している
  • 「このデバイスはこの充電規格に対応している」ということを自動で判別してくれる
  • 判別した結果に応じて、対応している規格の中から最も早く充電できる規格で充電を行ってくれる

という機能です。

そしてPowerIQ・PowerIQ 2.0・Power 3.0・PowerIQ 3.0 (Gen2) は、それぞれ以下の充電規格に対応しています。

PowerIQバージョン対応している充電規格
PowerIQUSB BC DCP・Apple 2.4A
PowerIQ 2.0USB BC DCP・Apple 2.4A・Quick Charge 2.0/3.0
HUAWEI FCP・Samsung AFC
PowerIQ 3.0USB BC DCP・Apple 2.4A・Quick Charge 2.0/3.0
USB PD(仕様違反)
PowerIQ 3.0 (Gen2)USB BC DCP・Apple 2.4A・Quick Charge 2.0/3.0
USB PD

結局のところ、PowerIQが搭載されていても自分のスマートフォンの充電規格に対応していなければ急速充電はできません。PowerIQという言葉に惑わされず、「自分のスマートフォンの充電規格に対応しているかどうか」で充電器・モバイルバッテリーを選ぶようにしましょう。

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