「USB Type-Cのすべて」と「USB 3.2のすべて」を読んだ感想

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CQ出版社の「USB Type-Cのすべて」と「USB 3.2のすべて」を読んだので、発売からちょっと時間が経ってしまいましたが読んだ感想を簡単に書いてみます。


USB Type-Cのすべて
CQ出版社が運営するWebショップ.電子技術やアマチュア無線関係の雑誌・書籍を販売しています.

まずは「USB Type-Cのすべて」の方から。

この本はタイトルの通り、「USB Type-C」について解説している書籍です。「Standard-AとかMicro-Bとか、USBのコネクターには色々な形状があるよね〜」という話から、「どうやってUSB Type-Cはリバーシブルを実現しているのか」「USB Power Delivery」「Alternate Mode」「USB Type-CでUSB 3.2 Gen 2の高速データ伝送を実装する勘所」等々、基礎的な部分から実際に実装する際のポイントまで、一通り解説されています。

USB機器の設計・開発に関わる人を対象としている書籍ではありますが、ユーザー目線でも知っておくと役に立つポイントが数多く解説されています。例えば、USB Standard-A to Type-Cケーブルはなぜ56kΩでプルアップするか分かりますか? この本を読めばそういったことが分かるようになり、USB Type-Cを搭載した製品がどのように動作してるのか、より深く・正確に理解することができます。

基礎的な部分から書かれているとはいえジャンルで言えば専門書にあたるため、「USB Type-Cなんて聞いたこともありません」という人が読むには少々ハードルが高めです。目安としては、インターネットで読める記事に物足りなさを感じるようになったら「USB Type-Cのすべて」を読むと良いのではないかと思います。あと、当ブログの記事を読んだけど何言ってるか良く分からんかったという人も「USB Type-Cのすべて」を読むとだいぶ内容がわかるようになると思います。 (小声)

USB関連はネットでも数多くの解説記事がある反面、商業メディアにしろ個人ブログにしろ「ん?」と思ってしまう内容の記事が少なくありません。そのような現在の状況において、「信頼性の高いUSB Type-Cの日本語情報」として貴重な1冊だと思います。製品開発に携わる人のみならず、PC系の媒体で文章を書いている文筆業の人や、最新のUSB事情をちゃんと理解したい人は必読の書籍です。


USB 3.2のすべて
CQ出版社が運営するWebショップ.電子技術やアマチュア無線関係の雑誌・書籍を販売しています.

次は「USB 3.2のすべて」です。

「USB Type-Cのすべて」はUSB Type-Cのみにフォーカスを当てた書籍ですが、「USB 3.2のすべて」はUSB 3.2のデータ伝送全般にフォーカスを当てた書籍となります。USBのアーキテクチャから始まり、物理層・リンク層・プロトコル層の解説や、実際に製品に実装する上でのポイントや評価方法などが解説されています。

いきなりUSB 3.2の解説に入るのではなく、「USB 2.0ではこうなっていましたが、それがUSB 3.2ではこのようになっています」という風にUSB 2.0の解説からしてくれるため、USB 1.x/2.0の時代からUSB製品の設計・開発に携わっている歴戦の猛者だけでなく、今からUSBの世界に足を踏み入れるビギナーの人にもとっつきやすいように配慮されています。

ユーザー目線でも知っておくと役に立つポイントの多かった「USB Type-Cのすべて」と比較して、「USB 3.2のすべて」のほうは、より “開発者向け” という面が強い印象を受けました。しかしこれはある意味当然で、ユーザー的にはUSB 3.0/3.1/3.2を区別できれば (どれが5Gbps・10Gbps・20Gbpsなのか知っていれば) 実用上は十分であり、それ以上の情報が必要となるのは基本的に開発者に絞られるためです。

そして、「USB 3.2のすべて」はUSB製品を設計・開発する人にとって心強い書籍です。USBのアーキテクチャや各層の解説をしている書籍やネット記事はほとんどないため、ちゃんと勉強しようと思ったらUSBの仕様書を読む以外に選択肢がほとんどありません。しかしながら仕様書は英語である上に解釈にブレが出ないよう厳密に書かれており、冗長な文章である場合が多いです (要は読んでて眠い) 。そのため、「今からUSBを勉強して開発するぞ!」という人が初手で挑むには仕様書はちょっとハードルが高いわけですが、この「USB 3.2のすべて」を間に挟むことによって、ある程度理解を深めてから仕様書に入ることができるようになります。

仕様の解説だけに留まらず、「どうすれば仕様で定められている要件を満たせるのか」「USBの仕様ではこうなってるけど現実的には……」といったところも解説されており、開発者の方には特に役立つ1冊だと思います。


「USB Type-Cのすべて」も「USB 3.2のすべて」も、USBの仕様策定や実際の製品開発に携わっているエキスパートの方々が執筆された書籍です。最終的な仕様の詳細はUSB-IFが公開している各仕様書を参照する必要があるものの、これだけの情報を「日本語で」読めるというのは非常にありがたいです。

「ネットで手軽に得られる情報」と「USBの仕様書」の間を橋渡ししてくれる、そんな書籍となっています。