ここ数年で通販サイトで見かけるようになったThunderboltを自称しているUSB Type-Cケーブルについて、ThunderboltとUSBのエコシステムの違いから、どのように考えるべきか解説します。
この記事で言いたいこと
通販サイトでThunderboltケーブルを探すと「Thunderbolt」を自称している胡散臭いUSB Type-Cケーブルが大量にヒットしますが、正規のThunderboltケーブルではない可能性が非常に高いため、Thunderboltケーブルとして購入するのはお勧めしません。
Thunderboltケーブルを購入する場合はApple, Belkin, Cable Matters, CalDigit, OWC, Plugableのブランドで販売されているThunderboltケーブルを購入することをお勧めします。
ThunderboltとUSBの違い
自称Thunderboltケーブルについて正しく認識するためには、ThunderboltとUSBの違いについて知る必要があります。
技術的な違いはさておき、ThunderboltとUSBのエコシステムを比べた時の最も大きな違いが「対応製品の認定 (Certification) 取得が必須か否か」という点です。
以下の表はThunderboltの開発元であるIntelのWebページに載っているもので、Thunderboltのみ「Mandatory testing and certification」にチェックが入っており、USBにはチェックが入っていません。mandatoryは「必須の」とか「義務の」といった意味なので、Thunderboltは製品のテストおよび認定取得が必須であるのに対して、USBでは必須ではないことを示しています。
これはそれぞれの方向性・思想の違いによるもので、USBはどちらかというとパフォーマンスや100%の互換性よりも普及すること・製品のアクセス性 (流通量や価格) を重視しているのに対して、ThunderboltはUSBよりハイスペック志向で、プロユースを想定してパフォーマンスや高い互換性を重視していることに起因します。
USB | Thunderbolt | |
---|---|---|
方向性 | 普及重視 | ハイスペック志向 |
仕様書 | 誰でも無料でアクセス可 | プロプライエタリ |
製品の認定取得 | 非必須 | 必須 |
GRLやUL、Allionといった専門機関でのコンプライアンステストや認定取得を必須とした場合、流通する製品が一定の性能・品質を満たしていることを担保したり、いわゆる相性問題を減らして互換性を高めることができる一方で、コスト増に直結します。そのため、USBでは認定取得は任意、Thunderboltでは必須となっています。
ThunderboltケーブルはUSBケーブルよりも高価な場合がほとんどですが、ちゃんと理由があって高価だということですね。 (もちろんIntel税という面もありますが)
本物と偽物の違い
Thunderboltでは認定取得が必須になっているということは、認定を取得している製品のみが本物のThunderbolt製品であり、認定を取得していない製品はThunderbolt製品ではないということです。
その「本物」のThunderbolt製品はThunderboltのWebサイトでリストが公開されており、誰でも確認することができます。 (全製品が網羅されているわけではない模様。会員企業のみアクセスできるページではもっと色々確認できるっぽい)
ケーブルに絞って見てみると、どれも似たようなデザインであることが分かります。 https://www.thunderbolttechnology.net/products?tid=3
このように、本物のThunderboltケーブルはどれもThunderboltのロゴ (稲妻マーク) が印字されており、色はブラックもしくはホワイトで統一されています。
一方で、通販サイトでThunderboltケーブルを探してみると、このデザイン法則に沿っていない胡散臭いケーブルが色々とヒットします。
デザインだけでは証拠として弱いのは否めませんが、本物のThunderboltケーブルがどれも同じようなデザインとなっているのに対して、そのデザインからかけ離れていてThunderboltのWebサイトにも掲載されていないノーブランドの自称Thunderboltケーブルが、ちゃんとThunderboltの認定を取得している可能性はかなり低いと考えられます。つまり、これらの胡散臭いケーブルはThunderboltを自称しているだけの偽物である可能性が非常に高いということです。
自称Thunderboltケーブルをお勧めしない理由
冒頭にも書きましたが、胡散臭い自称Thunderboltケーブルを購入するのはお勧めしません。これは別に「粗悪品に決まってる!だから買うな!」などという理由ではなく、あのようなケーブルをThunderboltケーブルとして買っても意味がないためです。
Thunderboltケーブルを求める動機は人それぞれだと思いますが、大抵は以下の3つのいずれかに集約されるでしょう。
- Thunderbolt周辺機器の接続に使うため、Thunderboltの機能が必要
- 性能的に最高のUSB Type-Cケーブルが欲しい
- 相性問題に出くわしたくない
そして、これらの土台となっているのが「全製品に義務付けられているテストとThunderbolt認定の取得」です。
Thunderbolt仕様を満たしており、Thunderboltの機能を備えていることを保証しているのがThunderbolt認定です。USB Type-Cケーブルは同じ見た目で様々なスペックのものが存在しますが、最高の機能・性能を備えていることを保証しているのがThunderbolt認定です。テストを行い、流通前に相性問題を洗い出してくれているのがThunderbolt認定です。「Thunderboltの機能を備えている “はず” 」「最高の性能を備えている “はず” 」「相性問題は起きない “はず” 」で良いのであれば、その辺のUSBケーブルで構わないでしょう。Thunderboltケーブルを選んでいるということは完璧なケーブルを期待しているはずなのに、Thunderbolt認定のないケーブルを買ってしまうと、「Thunderboltの機能を備えていない製品 “かもしれない” 」「最高スペックのUSB Type-Cケーブルではない “かもしれない” 」「相性問題が起きる “かもしれない” 」という、本来はしなくていい心配をしなければならなくなってしまいます。
色々な心配をしなくていいというのがThunderboltの良いところであり、それの土台となっているのが全製品に義務付けられたテストと認定の取得なので、認定のない偽物のThunderboltケーブルを購入してしまうと根底から崩れてしまいます。なので自称Thunderboltケーブルを買うのはお勧めしません。
Thunderbolt “対応” ケーブル?
これまで解説してきたのは堂々と「Thunderboltケーブル」を自称しているケーブルでしたが、通販サイトではそれらの他に、「USB4ケーブル Thunderbolt対応」というような紛らわしい商品タイトルのものも大量にヒットします。
こんなものを正規のThunderboltケーブルだと思う人はいないだろうと思いつつ、一応念のため言っておきますが、「Thunderbolt対応」「Thunderbolt互換」などと書かれていたとしても、この手のケーブルはThunderboltケーブルではありません。Thunderboltのロゴ (稲妻マーク) が印字されていてIntelの認定を取得しているもののみがThunderboltケーブルであり、これらはただのUSBケーブルです。
過去にThunderbolt 3への対応を自称しているUSB4ケーブルが実際にはThunderbolt 3 40Gbpsに対応していなかった例を取り上げたこともあるように、メーカーが自称している「Thunderbolt対応」「Thunderbolt互換」はアテにしないほうがいいです。一応、USBの仕様書には「こうやればThunderbolt 3に対応したケーブルを作れますよ〜」ということがオマケ程度に記載されていますが、メーカーがその辺も含めてちゃんと実装している保証はありません。それを保証しているのがThunderbolt認定なので、Thunderbolt製品としての機能を期待しているのであれば、Thunderbolt認定を取得している本物のThunderboltケーブルを購入するべきです。
どのThunderboltケーブルを買うべきか
Thunderboltケーブルを購入する際は自称Thunderboltのケーブルではなく本物のThunderboltケーブルを買うべきである理由を説明したので、最後に、本物のThunderboltケーブルを選び出す方法を説明して終わりにしたいと思います。
方法1 ThunderboltのWebサイトに掲載されているものを買う
まず1つ目は、ThunderboltのWebサイトに掲載されているものを買うという方法です。ThunderboltのWebサイトに掲載されているものがThunderboltの認定を取得していないということはないはずなので、ここに載っているものは信用して問題ないでしょう。
https://www.thunderbolttechnology.net/products
ただし、このリストはそもそも全製品が網羅されているわけではないことや、日本では入手できない中国系ブランドの登録が増えていて日本でも入手可能な製品を見つけ出すのがやや面倒なこと、販売元のブランドではなくODM元のメーカー名で登録されていることがありその辺の知識が必要なこと……等々、根気とヒマがあるなら1個1個調べることもできますが、正直探しやすいとは言えません。そのため、次に紹介する2つ目の方法で製品を探したり選ぶのが安パイです。
方法2 メーカー・ブランド買い
2つ目の方法は、ずばり「メーカー・ブランド買い」です。
ThunderboltのWebサイトのリストが使い勝手の良いものであればこのような必要はないのですが、実際には型番で検索するような機能もないため、エンドユーザーが「この製品は本物のThunderbolt製品かな?」ということを気軽に確認できるとは言い難いです。また、いざ調べたところでThunderboltのWebサイトのリストにちゃんと掲載されている保証もないため、そこから更に調べ直す手間や時間も考えると、結局のところ、実績のあるメーカー・ブランドのものを指名買いするのが1番楽で確実なのではないかと思います。
- Apple
- Belkin
- Cable Matters
- CalDigit
- OWC
- Plugable
から販売されているThunderboltケーブルや周辺機器は間違いなくThunderboltの認定を取得しており、日本でもAmazon等で容易に入手できます。これらのブランド名で販売されているものを買っておけばまず間違いはないでしょう。
これらのメーカー・ブランドの中ではCable Mattersのものが1番安いことがほとんどなので、特にこだわりがなければCable Mattersのものを買っておけばOKです。
まとめ
Thunderboltケーブルを買う場合は、Thunderboltの認定を取得している本物のThunderboltケーブルを買いましょう。
Apple, Belkin, Cable Matters, CalDigit, OWC, Plugableのブランドで販売されている、稲妻マークのあるケーブルを買えばまず間違いはありません。