規格的にアウトなUSB Type-C変換アダプタが売られている話

USB Type-CをUSB Standard-Aに変換するアダプタは規格的にアウトです。

はじめに

USB Type-Cの変換アダプタ、1つぐらい持っている方も多いのではないでしょうか。かくいう私もMicro-BをType-Cに変換するアダプタを緊急用としてカバンに忍ばせてたりします。

そんな感じで変換アダプタを持っている方も多いと思いますが、その一方で、規格的にアウトなUSB Type-Cの変換アダプタが販売されているのはご存知でしょうか。

例えば、以下のような製品です。

何が「検証済」なのか理解不能ですが、上記のような「Type-Cレセプタクル to Standard-Aプラグ」という変換アダプタは規格で禁止されています。

しかしながら、そのことを知らない人が少なからずいるようなので、ちょっと掘り下げてみます。

用語の説明

早速説明していきたいところですが、いきなり「Standard-A」とか「レセプタクル」と言われても何のことか分からないと思うので、まず最初に用語を説明したいと思います。

Standard-A プラグ

Micro-B プラグ

「Standard-A」というのは、いわゆる「普通のUSB」の正式名称です。「USB-A」とか「Type-A」と呼ばれたりもします。

「Micro-B」というのはAndroidスマホやワイヤレスイヤホンなどに採用されている「MicroUSB」の正式名称です。

「レセプタクル (Receptacle) 」というのは「差し込まれる側の端子」のことを指します。凸凹の凹です。

レセプタクルの逆が「プラグ (Plug) 」で、「差し込む側の端子」です。凸凹の凸。

用語の説明はこれぐらいにして、本題に入っていきたいと思います。

USB Type-Cの規格では

Section 3.1.4

USB Type-Cの規格では、変換アダプタは以下の2種類が定義されています。

USB Type-C Cable and Connector Specification Revision 2.0 Section 3.1.4

1つ目が「Micro-Bレセプタクル to Type-Cプラグ」の変換アダプタで、2つ目が「Standard-Aレセプタクル to Type-Cプラグ」の変換アダプタです。

文字で説明されても分かりづらいと思うので具体例を出すと、以下のような製品です。

USB Type-Cの規格で定義されている変換アダプタは、この2種類のみです。この2つ以外は定義されていません。

Section 2.2

上記に加えて、Section 2.2ではこのような記述が存在しています。

USB Type-C Cable and Connector Specification Revision 2.0 Section 2.2

日本語訳:USB Type-Cレセプタクル to USBレガシーの変換アダプタは明確に定義も許可もされていません。そのようなアダプタによって、無効かつ潜在的に安全ではない多数のケーブル接続をユーザーが構築できるようになります。

最初の1文で、USB Type-Cレセプタクルを搭載した変換アダプタは明確に禁止されているということが分かります。

まとめ

  • USB Type-Cの規格で定義されている変換アダプタは「Micro-Bレセプタクル to Type-Cプラグ」と「Standard-Aレセプタクル to Type-Cプラグ」の2つのみ
  • 特に、Type-Cレセプタクルを搭載している変換アダプタは明確に禁止されている

分からなかったら、とりあえず「USB Type-Cを何かに変換するやつはNG」と覚えてください。

何が悪いのか

例1 : A to A

Cレセプタクル to Aプラグの変換アダプタとA to Cのケーブルを組み合わせた場合、A to Aという本来では存在しないケーブルを作成できてしまいます。

こんなバカなマネをする人はいない (と信じたい) ですが、規格違反の変換アダプタがあればこういった接続も可能となります。

ACアダプタにしろPCにしろ、そもそも規格としてStandard-Aレセプタクルは出力専用であるため、電流が流れ込むような状況は想定されていません。出力専用のモノ同士を接続すれば、故障などロクな結果にはならないでしょう。

例2 : 充電

Cレセプタクル to Aプラグの変換アダプタを使用することによって、以下のような接続ができるようになってしまいます。 (ケーブルはC to C)

USB Type-Cのデバイスには5V/3A程度を消費する製品が数多くあります。それに対して、USB Standard-AなACアダプタやPCは、その多くが5V/3Aを出力することができません。例えば、iPhone付属の5W ACアダプタは5V/1Aが最大です。

スマートフォンのようなインテリジェントなデバイスであれば「この電源は5V/3Aを出力できるな」ということを確認してから5V/3Aを引くようになっていますが、残念ながら世の全てのUSB Type-Cデバイスがそのようなチェックを行うようにはなっていません。

「5V/1Aしか出力できないもの」に、「5V/3Aの負荷」を掛けたら、当然「過負荷」となります。過負荷になった場合、運が良ければACアダプタの保護回路が作動して出力がストップ・充電されないだけで済みますが、運が悪ければブラウンアウト (負荷が重すぎて出力電圧が降下すること) が起きて故障などに繋がる恐れがあります。

そのため、規格違反の変換アダプタを使って充電などを行うのは絶対にやめましょう

有名メーカーも規格違反品を製品化している

USBはType-Cに限らず昔から規格違反の製品が製造・販売されていますが、Type-Cに関しても有名メーカーが規格違反品を単体で販売していたり付属品として同梱していたりします。

サンワサプライ

ONKYO

SHIDO:002のインターフェースはUSB Type-Cなので、付属させるのであれば変換アダプタではなくA to Cケーブルを付属させなければなりません。

SanDisk

SanDisk Extreme Portable SSD

SanDisk Extreme Portable SSDもインターフェースはUSB Type-Cなので、変換アダプタではなくA to Cケーブルを付属させなければなりません。

ちなみに、同じポータブルSSDでもSamsung T5はちゃんとA to Cケーブルが付属してきます

SteelSeries

SteelSeries Arctis 1 Wireless (ヘッドセット左横の変換ケーブル)

トランスミッター (電波送出機) がUSB Type-Cで、その変換用に規格違反な変換アダプタが付属してくる模様です。

Master & Dynamic

Master & Dynamic MW07

AUKEY

CB-C52 (カタログが削除されたためリンク切れ)

CB-C53 (カタログが削除されたためリンク切れ)

現在は販売されていませんが、過去にAUKEYは規格違反な変換アダプタが付属するケーブルを販売していました。

所感

メーカーが規格を守らないのであれば、消費者が自衛するしかありません。ただでさえ複雑なUSB Type-Cが、このようなメーカーのせいでさらに面倒な状況になっていると思います。

こういった変換アダプタの需要があることは理解できますが、どう頑張ってもリスクを排除できないからこそ規格で明確に禁止されているわけなので、諦めてA to CとC to Cの2種類のケーブルを用意するようにしましょう。