AnkerのPowerIQ 3.0がUSB Type-C・USB PDの仕様に違反している件について解説します。
本記事の内容は、記事公開時点 (2020年6月14日) で発売されている製品に基づいて作成されています。
2020年6月30日にPowerIQ 3.0 (Gen2) なるものが爆誕しましたが、本記事にはPowerIQ 3.0 (Gen2) に関する内容は含まれていません。PowerIQ 3.0 (Gen2) についてはこちらの記事で説明しています。
今回使用したPowerIQ 3.0製品
PowerIQ 3.0の仕様を調べるにあたって、以下のPowerIQ 3.0 ACアダプター 2モデルを用意しました。
どちらもPowerIQ 3.0が謳われており、PowerPort Atom III (Two Ports) はUSB Type-Cポートから最大45Wを、PowerPort Atom III 60Wは最大60Wを出力できるとされています。
2製品のUSB Type-Cポートの仕様を確認
早速、PowerPort Atom III (Two Ports) とPowerPort Atom III 60WのUSB Type-Cポートの仕様を確認していきます。
PowerPort Atom III (Two Ports)
PowerPort Atom III (Two Ports) のUSB Type-Cポートは、USB PDで「5.0V/2.4A」「9.0V/3.0A」「15.0V/3.0A」「20.0V/2.25A」の出力に対応しています。
PowerPort Atom III 60W
PowerPort Atom III 60Wは、USB PDで「5.0V/2.4A」「9.0V/3.0A」「15.0V/3.0A」「20.0V/3.0A」の出力に対応しています。
PowerIQ 3.0に共通する特徴
PowerPort Atom III (Two Ports) とPowerPort Atom III 60Wを調べた結果、「USB PDの5.0Vの出力が2.4Aとなっている」という特徴が共通していることが分かりました。
私が調べたものではありませんが、PowerPort III mini、PowerPort Atom III Slim、PowerPort Atom III Slim (Four Ports) 、PowerPort III Nanoでも同様の報告がされています。
何がどのように違反しているのか
PowerIQ 3.0の特徴を踏まえ、どこがどのようにUSBの仕様に違反しているのか説明していきます。
USB PDには「パワールール」というものが規定されており、そこでは5Vの出力について以下のように記載されています。
これだけ見せられても何のことか分からないかもしれませんが、重要なのは「15W以上出力できる場合、5Vでは最低3Aの電流値を通知しなければならない」という点です。 “shall” であるため、必ず従う必要があります。
しかしながらPowerIQ 3.0は5.0V/2.4Aを通知するため、USB PDの仕様に違反しています。
PowerIQ 3.0による実害・デメリット
ということで、PowerIQ 3.0のどの部分がどのようにUSB PDの仕様に違反しているのかを説明しました。続いて、その仕様違反によってどのようなデメリットがあるか説明していきます。
「USBの仕様に違反している」と知って、まず気になるのが「接続した機器が壊れるのか!?」的なことだと思いますが、この点については心配しなくても大丈夫でしょう。違反しているのは主に互換性に関わる項目なので、PowerIQ 3.0製品に接続したとしても故障するような可能性は低いです。メーカーもそんなものを世に出したら評判ガタ落ちなので、さすがにそんな真似はしないでしょう。
では何が問題なのかというと、「互換性」です。先程も言ったように、PowerIQ 3.0は互換性に関わる項目に違反しています。その結果、実際に一部のデバイスでは充電できないという事態が発生しているようです。
それより、1月下旬にAmazonでポチったAnkerのPowerPort Atom III Slim (Four Ports)(USB充電器)を返品するハメになった。USB-C端子からUSB PD対応のVAIO A12を充電できず、メーカーに電話して送付してもらった交換品でも、充電不可だった。#VAIO #Anker
— ともかつ´・ω・` (@tomokatsu0314) February 13, 2020
PowerIQマジで分からん。
— 西村 彰悟 / デジタルマーケティングエンジニア (@AQRiL_1132) September 10, 2019
取り敢えず以下のAnker製品からはVAIO A12の充電はできない様子。
・PowerPort Atom III
・PowerPort Atom III Slim
・PowerCore+ 19000 PD
挙動見てると保護回路に給電ブロックされてるように見える。
USB-PD対応と謳いながら5V/3A出ないUSB-PD規格違反品だからか。
このVAIO A12のように全く充電できないというパターンや、5Vで充電されるスマートフォンが最高速度で充電されないパターンなど、USB PD対応製品として互換性が低い・期待される性能を発揮しないというのがPowerIQ 3.0のデメリットです。
まとめ
- PowerIQ 3.0はUSB PDの仕様に違反している
- 接続したデバイスを故障させるようなものではない
- USB PD対応製品として互換性が低い
- 実際に一部のデバイスではPowerIQ 3.0のACアダプターで充電できない
- 充電できたとしても充電速度が遅い場合もある
ただでさえUSB PDはデバイス・ケーブル・ACアダプターの組み合わせによって充電できたりできなかったりするため、トラブルを避けたい人はPowerIQ 3.0製品は避けたほうが良いでしょう。
この記事について
この記事で使用しているPowerPort Atom III (Two Ports) [A2322121]とPowerPort Atom III 60W [A2613121]は、Amazon.co.jpのマーケットプレイス販売者「AnkerDirect」から、当サイトの管理人が購入したものです。
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