GaN IC採用の「RAVPower 61W USB-C 急速充電器 (RP-PC112) 」を購入したので、レビューを行います。
要約
RAVPower RP-PC112は少なくとも以下の点についてUSB Type-CやUSB Power Deliveryの仕様・規格に違反しています。
- 5Vの出力 (Fixed Supply PDO) が2.4Aになっている
- ケーブルの確認を行わずに20Vを超える出力を通知する
- Qualcomm Quick Charge 2.0/3.0に対応している
これらが原因で充電されない・充電が遅い等の事象が起きる場合があります。そのため、RP-PC112はオススメしません。
開封・製品外観
- PD PIONERR 61W CHARGER/急速充電器
- Model / 型番: RP-PC112
- Input / 入力: 100V-240V-50/60Hz 1.5A
- PD Output / 出力: 5V=3A, 9V=3A, 12V=3A, 15V=3A, 20V=3A, 20.3V=3A
- JP Importer: 株式会社SUNVALLEY JAPAN
- Shenzhen NearbyExpress Technology Development Co., LTD.
- PSEマーク: あり (TÜV SÜD PSB Pte Ltd / ひし形 / 届出事業者名→??)
- SN: 0R751N4R
PSEマークについて、電気用品安全法施行規則では「表示すべき事項は原則近接して表示すること」とされています。PSEマーク周辺にある届出事業者名らしき文字列は「株式会社SUNVALLEY JAPAN」ですが、PSEマークではなく「JP Importer」に付随しているように読めます。
手持ちのACアダプター 5個を確認してみましたが、このような表記になっているものは1つもなく、全てキッチリPSEマークの周囲に事業者名が記載されていました。恐らくみなさんがお持ちのACアダプターも、明確にPSEマークの周囲に事業者名が記載されていることでしょう。
Anker 60Wと比較
同じ60W (61W) 出力のAnker A2015113との比較です。
フットプリント自体はRAVPowerの方が小さいものの、厚さはAnkerの方が薄いため、体積的にはそう大きな差はありません。また、RAVPowerは角ばっているのに対してAnkerは丸みを帯びているという違いがあります。
Source_Capabilitiesメッセージ
RAVPower RP-PC112は公称で最大61WのUSB PDに対応していることになっています。 (PDP Rating 61W)
実際のUSB PDのパケットを確認したところ、「5V/2.4A」「9V/3A」「12V/3A」「15V/3A」「20V/3A」「20.3V/3A」のFixed Supply PDOを持つSource_Capabilitiesメッセージを送信していました。
5V/2.4A
USB PDではパワールールというものが定められており、RAVPower RP-PC112は公称61WのUSB PD電源であるため、5Vでは最大電流として最低3AをSource_Capabilitiesメッセージで通知しなければなりませんが、実際に通知しているのは5000mV/2400mA (5V/2.4A) であるため、これはUSB PDの仕様に違反しています。
20.3V
USB PDでは、3Aまたは20Vを超えるSource_Capabilitiesメッセージを送信する際は、送信前にケーブルが3A・20V超の電流・電圧に対応しているか確認を行わなければなりませんが、RAVPower RP-PC112はその確認を行わずに20.3Vを通知しており、これはUSB PDの仕様に違反しています。
USB PD以外の充電規格を確認
AVHzY CT-2 (Kotomi Premium) とPOWER-Z KM001Cを使用して、対応している充電規格を確認しました。
- Apple 2.4A
- USB BC 1.2 DCP
- Qualcomm Quick Charge 2.0/3.0
に対応している模様です。
Qualcomm Quick Charge 2.0/3.0
USB Type-Cは、充電規格に関してUSBが定める方式のみを実装するように規定していますが、RAVPower RP-PC112はQualcomm Quick Charge 2.0/3.0に対応しているため、USB Type-Cの仕様に違反していることになります。
USB Type-C製品が出始めた2015〜2016年ごろ、仕様で定められている範囲を超える電圧をCCに印加し、接続したケーブルのeMarkerを破損させる恐れのある粗悪なQuick Charge対応USB Type-C ACアダプターが出回りました。そのため、RAVPower RP-PC112についても確認を行いました。
結果ですが、Quick Charge有効時でもCCの電圧は仕様で定められている範囲内であったため、ケーブルのeMarkerを破損させることはないと思われます。
いろいろ充電してみた
ThinkPad Yoga 370
ThinkPad Yoga 370に接続したところ、20V/3AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、60W弱が供給されていました。
Lenovo Vantage上では「60W USB-C 電源」として認識されていました。
iPad Pro 11 (2018)
iPad Pro 11を接続したところ、15V/3AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、30W弱が供給されていました。
iPad Air 2
USB PD非対応・Apple 2.4A対応のiPad Air 2を接続したところ、USB PDのネゴシエーションは行われず、約15Wが供給されていました。
Galaxy S9
Galaxy S9を接続したところ、9V/3AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約11Wが供給されていました。
Galaxy S9は5V PDOの最大電流が3Aの電源と接続した場合、5V/3Aでネゴシエーションを行います。しかしながらRAVPower RP-PC112はUSB PDの仕様に違反して5Vが2.4Aとなっているため、通常とは異なり9Vでネゴシエーション・充電を行ったと思われます。
Pixel 3
Pixel 3を接続したところ、9V/3AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約16Wが供給されていました。
OnePlus 7
OnePlus 7を接続したところ、5V/2.4AでUSB PDのネゴシエーションが行われ、約12Wが供給されていました。
通常、OnePlus 7はUSB PD対応ACアダプターでは5V/3Aで充電を行います。しかしながらRAVPower RP-PC112はUSB PDのパワールールに違反して5Vが2.4Aとなっており、実際の充電も約5V/2.4Aで頭打ちとなるため、仕様に準拠しているUSB PD ACアダプターと比較して充電速度が劣ります。
ストレステスト
長時間負荷
8時間ほど連続で20.3V/3Aを出力させてみたところ、最初から最後まで問題なく60.6Wを出力していました。
テスト後に触ってみると「ギリギリ人が触れ続られるかどうか (すぐにヤケドするほどではないが、触り続けるとヤケドしそう)」ぐらいの温度でした。
過負荷
5V・9V・12V・15V・20V・20.3Vそれぞれで定格以上の負荷を掛けてみたところ、どの電圧でも約3.9Aで過電流保護回路が作動し、出力がシャットダウンしました。
所感
2019年にもなって、未だにパワールールすら守っていない製品が新発売されているという事実に呆れるほかありません。パワールール違反なんてデメリットはあってもメリットはゼロです。
こんなものを買うぐらいであればAnker PowerPort Speed PD 60の方をオススメします。
この記事について
この記事で使用しているRAVPower RP-PC112は、Amazon.co.jpのマーケットプレイス販売者「Sunvalley Brands Gazietto」から、当サイトの管理人が購入したものです。 (購入元URL)
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