iPhone 15を購入したので、充電やUSB Type-C周りの仕様について調べました。
測定環境
本記事の内容はすべて以下の条件で測定しました。
- iPhone 15 [A3089]
- iOS 17.3.1
- 最大容量: 100%
- 最適化されたバッテリー充電: OFF
付属ケーブルの仕様
iPhone 15付属のケーブルの型番はA2795です。
このケーブルはUSB 2.0、USB PD 60Wをサポートしています。iPhone 15本体はDisplayPort Alternate Modeをサポートしていますが、この付属のケーブルはDP Alt Modeをサポートしません。
充電に関する仕様
Apple 35W [A2765]
USB PD 35WをサポートしているApple デュアルUSB-Cポート搭載35W電源アダプタ [A2765] で充電したところ、約21Wが供給されていました。
Apple 20W [A2305]
USB PD 20WをサポートしているApple 20W USB-C電源アダプタ [A2305] で充電したところ、約20Wが供給されていました。
Apple 18W [A1720]
USB PD 18WをサポートしているApple 18W USB-C電源アダプタ [A1720] で充電したところ、約18Wが供給されていました。
Apple 12W [A2167]
Apple 2.4AとUSB BC DCPをサポートしているApple 12W USB電源アダプタ [A2167] で充電したところ、約7.5Wが供給されていました。
iPhone 13 miniは12Wで充電されていたため、iPhone 15が7.5Wで充電されているのは異常なように見えますが、これは正常な動作です。USB Type-Cは、USBが定める方式以外の方法で電力のハンドシェイクを行うことを仕様で禁止しているため、Apple 2.4Aのハンドシェイクを行うことは仕様違反となります。iPhone 13 miniはLightningであるためこの制限が適用されませんが、iPhone 15はUSB Type-Cになったため、USBの仕様に準拠するとApple 2.4Aのハンドシェイクを行うことができません。そのため、Apple 2.4AではなくUSB BC DCPでの充電となり、7.5Wが供給されるという結果になっています。
つまり、iPhone 15が7.5Wで充電されているのはUSB Type-Cの仕様に準拠した結果であり、正常な動作です。
Apple 5W [A1385]
Apple 1.0AをサポートしているApple 5W USB電源アダプタ [A1385] で充電したところ、約5Wが供給されていました。
Samsung 45W [EP-TA845]
USB PD PPS 45WをサポートしているSamsung EP-TA845で充電したところ、約20Wが供給されていました。
Google 18W [G1000-US]
USB PD 18WをサポートしているGoogle G1000-USで充電したところ、約18Wが供給されていました。
USB Type-C Current
USB BC DCPとUSB Type-C Current 3AをサポートしているGoogle ADP-23AWで充電したところ、約15Wが供給されていました。
iPhone 15を充電し続けたまま、ADP-23AWのもう片方のポートに負荷を掛けてiPhone 15側のポートをUSB Type-C Current 1.5A動作に変更させたところ、供給される電力が約7.5Wへ変化しました。
iPhone 15はCCの電圧を監視して、引く電流値を適切に制御するようになっています。
USB BC DCP
USB Type-Cレセプタクル to USB Std-Aプラグ変換アダプター使ってUSB Type-C Currentを無効化し、USB BC DCPのみ有効な状態にしたADP-23AWで充電したところ、約7.5Wが供給されていました。
イヤホンジャック変換アダプター
Apple A2049
DAC内蔵タイプの変換アダプターであるApple A2049でイヤホンを接続したところ、正常にイヤホンから音声が出力されました。
エレコム AD-C35BK
アナログタイプ (AAAM方式) の変換アダプターであるエレコム AD-C35BKでイヤホンを接続したところ、音楽を再生してもiPhone 15本体のスピーカーから出力されました。
iPhone 15はアナログタイプ (AAAM方式) のイヤホンジャック変換アダプターをサポートしていないため、Apple A2049などのDAC内蔵型の変換アダプターを使用する必要があります。
DisplayPort Alternate Mode
iPhone 15はDisplayPort Alternate Modeをサポートしています。
iPhone 15のUSB Type-Cポートの仕様の話
iPhone 15がDisplayPort Alt Modeをサポートしていること自体は公式スペックにも書かれていることなので特に驚きはないですが、iPhone 15 (not Pro) はUSB 2.0 + DisplayPort Alt Modeというスペックになっており、「DisplayPort Alt ModeはUSB 3.x以上が必須のはずなのに、USB 2.0とはどういうことだ!?」というような反応をiPhone 15がリリースされた直後にしばしば見かけたので、その辺を簡単に解説しておきます。
まず、「DisplayPort Alt ModeはUSB 3.x以上が必須である」という認識は半分正しく、半分誤っています。USBやDisplayPortの仕様では、DP Alt Modeをサポートする場合にUSB 3.x以上もサポートすることは特に要件になっていないため、DP Alt Modeをサポートするデバイスが必ずしもUSB 3.x以上をサポートする必要はありません。一方で、DP Alt Modeの信号はUSB 3.x用の信号線 (SSRX/SSTX) を使ってモニターに伝送されるため、ケーブルについてはUSB 3.x以上をサポートしている必要があります。そのため、iPhone 15のUSB 2.0 + DP Alt Modeという仕様は、特におかしくはありません。
実際、iPhone 15以前にも、USB 2.0 + DP Alt Modeというスペックのデバイスは存在していました。例えば、ChromebookはDP Alt Modeによる映像出力をサポートすることが要件で定められていますが、スマートフォン・タブレット向けのARM系プロセッサーはUSB 2.0止まりのものが少なくありません。特に、Chromebookに採用されるような廉価なARM系プロセッサーは大抵USB 2.0止まりであるため、そういったプロセッサーを採用しているChromebookでは、USB Type-CポートがUSB 2.0 + DP Alt Modeというスペックになっています。
iPhone 15がUSB 2.0 + DP Alt Modeという仕様になっているのも、おそらく同じ理由と考えられます。iPhone 15シリーズの発表イベントでは、Appleは「A17 ProはUSB 3をサポート! 10 Gb/s!!」とわざわざ時間を割いてアピールしていました。
このようにアピールしていたということは、裏を返せば、A17 Proより前のApple AシリーズプロセッサーはUSB 3.xをサポートしていない = iPhone 15に搭載されているApple A16のUSBコントローラーはUSB 2.0止まりである可能性が非常に高いと考えられます。
USBコントローラー自体がUSB 3.xをサポートしていないとどうしようもないため、iPhone 15のUSB Type-CポートはUSB 2.0 + DP Alt Modeというスペックになったと考えられます。
電力供給
iPhone 15のUSB Type-Cポートは最大4.5Wの電力供給を行えます。AppleのサポートページにはUSB Power Deliveryうんぬんと書いてありますが、USB PDは関係ないです。
You can use your iPhone to charge your AirPods, Apple Watch, or another small device that supports USB Power Delivery at up to 4.5 watts.
https://support.apple.com/en-us/105099
ちなみに4.5Wを超える負荷が掛かっても、電圧が2Vとか3Vに落ちるだけで特に出力がシャットダウンされたりなどはしない (OCPなどはない) ので、4.5W以上を消費するデバイスは接続しないことをお勧めします。
所感
Androidと同じケーブルがiPhoneに刺さるという現実に涙が止まりません。
さようなら、すべてのLightning。