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乱立するスマホ向け急速充電の規格について調べてみた

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スマートフォン・タブレット向け急速充電の規格が乱立していて非常にわかりにくいので、規格別にどんな仕様になっているのか調べました。

はじめに

一言に急速充電と言っても、USBの規格で定められているものからメーカー独自のものまで、数多くの規格が乱立しています。

具体的には、
USB系
Quick Charge
iPhone/iPadの急速充電
PowerIQ系
その他、海外スマホで使用されている規格
といった規格です。

基本的にこれらの間で互換性はなく、規格ごとに適した端末・ACアダプターを用意しなければならないため、非常にややこしいです。

これらの規格がどのような条件で有効になり、どういった仕組みで急速充電を実現しているのか調べてみました。

USB系

まず、USBの世代ごとの給電能力をまとめると以下の通りとなります。

給電能力
USB 2.0 500mA / 5V
USB 3.0 900mA / 5V
USB 3.1 Gen1 900mA / 5V
USB 3.1 Gen2 900mA / 5V

上の表が基本仕様となりますが、スマートフォンの普及とともに以下のような規格が追加で策定されました。

USB Type-C

USB Type-Cでは従来よりも多くの電気が流せるようになっており、C to Cケーブルでは1.5A/5V給電への対応が必須となりました。オプション扱いで3A/5V給電の規格も用意されており、ほとんどのType-C ACアダプタやC to Cケーブルがこれに対応しています。

Quick Chargeは一部のUSB Type-Cケーブルを破壊するため、USB Type-Cスマートフォンの充電にはType-Cの規格に沿った5V/3A給電を使用することを強く推奨します。

USB PD

USB Power Deliveryの略で、最大で5A/20V給電までが規定されています。スマートフォンで採用された例もありますが、基本的にはノートPC等で採用されている規格です。

USB BC

USB Battery Chargingの略で、最大で1.5A/5Vまでの給電が可能となります。一昔前のAndroid端末で急速充電と言うとUSB BCのことを指したのですが、より高速な充電方法の需要が高まったため、様々な独自規格が生まれました。

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Quick Charge (Qualcomm)

quick-charge

Quick ChargeとはQualcomm社が策定した急速充電の規格で、対応端末と対応ACアダプターを併せて使用することによって、高速な充電が可能となります。

USB Type-Cについて

Quick ChargeにUSB Type-Cケーブルを使用した場合、一部のType-CケーブルがQCの高電圧によって破壊されることが報告されています。

そのため、USB Type-Cスマートフォンの充電にはQuick ChargeではなくType-Cの規格で定められている5V/3A給電での充電を使用することを強く推奨します。

QCの動作原理

端末とACアダプターにそれぞれQC用チップを搭載し、相互に認証しあうことによってQCを有効化しています。

ACアダプター側で電気を9V等に昇圧してから端末に送り、その電気を端末側で4.2Vまで降圧することによって高速な充電を実現しています。中学校の理科で習う電流(アンペア) x 電圧(ボルト) = 電力(ワット)という原理を利用し、同じ電流でも電圧を高くすることによって、通常より多くの電力を端末へと送っています。

QCの世代について

記事執筆時点でQC 1.0、QC 2.0、QC 3.0の3つが策定されていますが、QCは後方互換性を持っているので基本的に新しければ新しいほど良いです。(QC 3.0に対応していればQC 2.0やQC 1.0にも対応しているということ)

規格ごとの電流・電圧値および対応Snapdragonは以下の通りとなります。

電流値 電圧値 電力 対応Snapdragon
Quick Charge 1.0 最大2A 5V 最大10W 600
Quick Charge 2.0 Class A 最大3A 5V / 9V / 12V MicroUSB – 最大24W
Type-C – 最大36W
Standard-A – 最大36W
810, 808, 805, 801, 800
615, 610
425, 415, 410, 400
212, 210, 208, 200
Quick Charge 2.0 Class B 最大3A 5V / 9V / 12V / 20V MicroUSB – 最大36W
Type-C – 最大60W
Standard-A – 最大60W
Quick Charge 3.0 最大3A 3.6V~20Vで200mV刻み 最大60W 820
652(旧620), 650(旧618), 617
430

QC対応端末について

QC対応端末はQualcommのページで検索できます。

対応しているSnapdragonを搭載した端末はQCに対応している場合がほとんどですが、Nexus 5X/6PのようにQCが有効化されていなかったり、Xperia X PerformanceやGalaxy S7/S7 edgeのようにQC 3.0対応Snapdragonを搭載しておきながらQC 2.0までの対応といった端末もあるので注意が必要です。

QC対応ACアダプターについて

QC対応端末を持っていたとしても、ACアダプターがQCに対応していなければ急速充電を行うことは出来ません。

ACアダプターが付属していなかったり、付属のACアダプターがQC非対応だった場合には、QC対応のACアダプターを購入する必要があります。

QC対応を謳ったケーブルについて

Amazon等でQC対応を謳ったケーブルが販売されていますが、それらは単に「QCに使用される電流・電圧に耐えうる線材を使用している」という意味でQC対応を謳っているだけです。

QualcommのHPには「QCはどのようなケーブルでも問題なく動作するように規格されています(意訳)」と書かれています。

しかしながらそうは言っても、安物のケーブルを使っているのであれば別途新しく買ったほうが良いとは思います。ケーブル1本ケチってスマホ壊してももったいないので……

参考

Qualcomm Quick Charge 2.0 AND 3.0
Qualcomm Quick Charge 2.0 technology explained | Qualcomm
Introducing Quick Charge 3.0: next-generation fast charging technology | Qualcomm
Quick Charge 2.0 とは – ケータイ Watch

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iPhone/iPadの充電

iPhone/iPadの急速充電はUSB BCに近い原理で動作させているようですが、天下のAppleは独自規格を作るのが大好きなのでUSB BCとは似て非なる機構で急速充電の対応・非対応を判別しているようです。(USB BCだとD+とD-をショートさせるが、AppleはD+/D-をプルアップ/ダウンさせてるらしい)

iPhone/iPadの急速充電は、電圧は5Vそのままで電流の方を上昇させることによって急速充電にしているようです。iPhoneでは4~5sが1.0A/5V、6~6s Plusが2.1A/5Vまでの充電に対応し、iPadでは昔のモデルで2.1A/5V、最近のモデルで2.4A/5Vでの充電になっているようです。

iPhone付属のACアダプタは1A/5Vまでしか出力できないので、高出力のACアダプタを買うとかなり充電速度が早くなりますよ。

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PowerIQ系 (Ankerなど)

PowerIQ

Amazonでは「接続された機器を検出し、最適な充電を実現!」といった謳い文句のACアダプターが数多く販売されています。この記事ではそういったACアダプターを”PowerIQ系”と総称し、解説していきます。

PowerIQ系の動作原理について

PowerIQ系はQuick Chargeのような急速充電規格とは根本的に異なります。と言うのも、QCは電圧を変えることによって急速充電を実現しているのに対して、PowerIQ系は電圧は5Vのまま、その端末が対応している上限まで電気を流す技術だからです。

そのため、5Vで急速充電が行われるiPhoneやiPad等では最高速度で充電できると考えられますが、QCに対応したAndroid端末ではQC対応ACアダプターの方が早く充電できると予想されます。

メーカーごとに差はあるのか?

様々なメーカーが「ウチの独自技術ですよ」と言わんばかりにそれぞれ名前を付けてPowerIQ系のACアダプターを販売していますが、正直それらのACアダプター同士に大きな差はありません。

例としてこのACアダプター向け電源コントローラーICを見て欲しいのですが、特徴として以下の様なことが謳われています。
・USBバッテリ充電仕様1.2
・iPod、iPhoneおよびiPadに対応したデバイダ・モード
・接続されたデバイスの充電に必要なD+/D–モードを自動的に選択

こういった特徴を持つ電源コントローラーICが販売されているということは、このICチップを採用すればどのメーカーであってもPowerIQ系のACアダプターが作れてしまうということです。

「最大2.4Aで充電」と書いてあるPowerIQ系ACアダプターの中身はどれもこういった電源コントローラーICなので、どのメーカーのものを買っても結果はほぼ同じになるはずです。

PowerIQ系まとめ

以上の内容をまとめると、
・どのメーカーのものを買っても中身はほぼ同じ
・iPhone/iPadは最大速度で充電できる
・昔のAndroid端末も最大速度で充電できる
・QCに対応したAndroid端末はそれなりの速度で充電できる
(QCの方が早い)
となります。

Android端末とiOS端末の両方を使用しているユーザーであれば、何も考えずに繋いでもそれなりの速度で充電してくれるので結構便利ですよ。

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日本ではマイナーな充電規格

主に海外のスマホで採用されている急速充電規格なので、スマホオタク以外には関係のない規格です。

TurboPower (Motorola)

2015年までのMotorola端末についてはTurboPower=Quick Chargeという認識でよかったのですが、2016年のMotorola端末についてはそのパターンに当てはまらないようです。というのも、どうやらMoto Zに付属しているTurboPower30充電器の最大出力が5V/5.7Aらしく、どう考えてもQuick Chargeの規格ではありません。

詳細は不明ですが、2016年のMotorola端末の中には独自の急速充電規格を採用した例があるようです。

SuperCharge (Huawei)

Mate 9で初めて採用された急速充電規格で、他の多くの急速充電規格が電圧を5Vよりも高くして充電速度を向上させている中、このSuperChargeは5Vよりも電圧を低くして発熱を抑え、その分多くの電気を流して充電速度を確保するという、一風変わった方法を採用しているようです。

supercharge

左がSuperCharge

このSuperChargeとは別にHuaweiは独自の急速充電方式を採用していた時期があり、それらはP9やhonor 8、Mate 8などに採用されているようです。こっちの充電方式はQCなどと同じく9Vなどに昇圧して充電するようですが、Huawei独自の規格でQCなどとは互換性がなく、QC対応のACアダプタと組み合わせて充電しても急速充電にはならないようです。

参考
Huawei P9/honor8/Mate8用アクセサリ紹介 – チラシの裏の実験室
Huawei Mate 9: Huawei SuperCharge – YouTube

Pump Express (MediaTek)

中華スマホによく採用されているMediaTekが策定した急速充電規格です。MediaTekとQualcommはスマホ用チップで熾烈なシェア争いをしているため、QualcommのQuick Chargeに対抗して策定されたものと推測されます。

Pump Expressの規格をまとめると次の通りとなります。

電流値 電圧値 電力
Pump Express 最大2A 3.6~5.0V (200mV刻み) 最大10W
Pump Express Plus 最大3A? 5V / 7V / 9V / 12V 最大18W?
Pump Express 2.0 最大3A? 5V~20V (500mV刻み) 最大30W?
Pump Express 3.0 最大5A超? 3V~6V (10~20mV刻み) 最大30W超?

Pump Expressも基本的にQuick Chargeと同様で、端末とACアダプターが対応していればPump Expressで急速充電できるようなのですが、Pump Express 3.0だけは微妙に制限があってUSB Type-Cでないとダメなようです。

参考
MediaTek unveils Pump Express 3.0: a Qualcomm Quick Charge alternative that will get 0% to 70% battery in 20 minutes
Pump Express Series Introduction – MediaTek (pdf)

BoostMaster (ASUS)

ZenFone 2はBoostMasterという急速充電の規格に対応していますが、ASUSが勝手に名前をつけただけで中身はただのQuick Chargeのようです。Quick Charge対応端末の一覧(pdf注意)にもZenFone 2が載っています。

1つ謎なのが、ZenFone 2はSnapdragonではなくIntel Atomを採用しているという点です。QC用チップだけ追加で載せたとかなんですかね。

Dash Charge (OnePlus)

OnePlus 3の急速充電規格として紹介されたDash Chargeですが、このDash Chargeの中身はOPPOのVOOCという急速充電規格のようです。(OnePlusはOPPOと親会社が同じ)

VOOCという規格は「電圧はUSBと同じ5Vのまま、電流を最大5Aまで流す」という、ゴリ押し感たっぷりな急速充電規格です。「5Aも流したら発熱ヤバいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、VOOCは端末・ケーブル・ACアダプターの全てがVOOCに対応していないと有効にならないようなので、安全性は確保されているはずです。多分。

記事執筆時点でVOOC対応Type-CケーブルはOnePlus公式のものしか販売されていないので、自宅以外にもDash Charge環境を整えるのであれば、追加でOnePlus公式Dash Chargeケーブル・ACアダプターを購入する必要があります。

参考
OPPO VOOC Flash Charge, Quick Charge – OPPO Global

Adaptive Fast Charging (Samsung)

Samsung製デバイスは販売国や機種によってSnapdragonを採用するか、自社のExynosを採用するかバラバラです。Snapdragon採用端末はQuick Chargeに対応していますが、Exynos採用端末ではSamsung独自のAdaptive Fast Chargingという急速充電規格に対応しているようです。

実機を持っていないので詳細はよくわからないのですが、Adaptive Fast Charging対応ACアダプターの出力は2A/5Vと1.67A/9Vの2パターンのようです。Quick Chargeと同じで、端末とACアダプターが対応していればケーブルは特に指定なし?っぽいです。多分。

なお、日本国内で正規販売されているSamsung製端末はすべてSnapdragonを採用しているので、海外からSIMフリー端末を輸入する場合以外では特に気にする必要のない規格です。

所感

充電器をいくつも用意するのが面倒なので、スマホはUSB Type-Cの3A/5V、ノートPC等はUSB PDに統一して欲しいです。