乱立するスマホの急速充電の規格をざっくり解説

スマートフォン・タブレット向け急速充電の規格が乱立していて分かりにくいので、規格別にどんな仕様になっているのかざっくり解説してみます。

はじめに

一言に急速充電と言っても、USBの規格で定められているものからメーカー独自のものまで、数多くの規格が乱立しています。

具体的には、

  • USB系 (Android・iPhone)
  • Apple (iPhoneのみ)
  • Quick Charge (Androidのみ)
  • PowerIQ系 (Android・iPhone)

といった規格です。

これらの規格がどういった仕組みで急速充電を実現しており、利用するためには何が必要なのかをまとめました。

USB系

今でこそかなりの電力を供給できるようになったUSBですが、そもそもの規格では

  • USB 2.0……2.5W (5V x 0.5A)
  • USB 3.X……4.5W (5V x 0.9A)

が供給できる最大の電力です。

これが基本ではありますが、スマートフォンの普及とともに以下のような規格が追加で策定されました。

USB PD

  • 方法:電圧を高くする、電流を大きくする (最大20V/5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、USB Type-C to USB Type-Cケーブル

「USB Power Delivery」の略で、規格上は20V/5A (100W) まで流すことができるようになっています。しかしながら、現実的には発熱や安全性といった理由から、スマホでは9V/2Aとか12V/1.5A程度での給電となることが多いようです。

USB PDはUSB Type-Cのみで利用できる急速充電規格であるため、MicroUSBの機種では利用することができません。

2017年以降に日本で発売されたスマートフォンの多くはUSB PDに対応しており、iPhoneは8・X以降の全モデル、Pixelは3aを含む全モデル、GalaxyはS8以降の全モデル、XperiaはXZ Premium・XZ1以降の全モデルが対応しています。

USB Type-C Current / USB BC 1.2

USB系の充電規格には、USB PDの他にも「USB Type-C Current」や「USB BC 1.2」というものがあります……が、今ではUSB PDに1本化されてしまっているので気にしなくてOKです。

Apple系

iPhone・iPadへの給電は、大きく分けて「Apple独自規格」と「USB PDによる高速充電」の2種類があります。

Apple独自規格

  • 方法:電流を大きくする (最大5V/2.4A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

Apple独自規格のUSB給電は1A・2.1A・2.4Aの3種類あります。

1Aは、おなじみの「iPhone付属のACアダプタ」です。

1A (5W) ACアダプタ

2.1Aは、初代iPad~iPad 3付属のACアダプタが対応しています。

2.1A (10W) ACアダプタ

2.4Aは、iPad 4以降のLightningなiPadに付属してくるACアダプタが対応しています。

2.4A (12W) ACアダプタ

iPhone 6以降のiPhoneは2.1A・2.4Aの規格に対応しているため、対応しているACアダプタを使えばより早く充電することが可能です。 (5s以前の機種は非対応)

この「Apple独自規格」はApple純正でないACアダプタも対応している場合が多く、「機器に応じて最適な方法で充電!」といった謳い文句で売られているACアダプタはまず間違いなく2.1Aもしくは2.4Aのどちらかに対応しているので、そういったACアダプタを使えばiPhoneをより早く充電することができます。

高速充電 (USB PD)

  • 方法:電圧を高くする、電流を大きくする (最大20V/5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、MFi認証のあるUSB-C to Lightningケーブル

最近のiPhone・iPadは、上記のApple独自規格に加えて「高速充電」にも対応しています。

「高速充電」と聞くとAppleの独自規格のように思えますが、中身はUSB PDです。そのため、USB PDに対応したACアダプタであれば、Apple純正ではないサードパーティのACアダプタでも高速充電を行うことが出来ます。

2019年8月時点での高速充電対応機種は以下の通りです。 (AppleのHPは更新されていませんが、iPhone 11シリーズとiPad Air (3rd gen)、iPad mini (5th gen)も対応しています)

高速充電を利用するには、iPhone・iPadとACアダプタがUSB PDに対応していることに加えて、「USB-C to Lightningケーブル」が必要です。Amazonなどでやたらと安いケーブルが売られていたりしますが、それらは十中八九MFi認証がないケーブルなので、購入する際はよく注意してMFi認証のあるものを選ぶようにしてください。

Quick Charge

quick-charge

動作原理

  • 方法:電圧を高くする (最大12V)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

Quick Chargeは端末とACアダプタが対応していれば利用することができます。 (ケーブルはデータ通信ができるものであれば何でもOK)

規格を策定・運用しているのはスマホ向けチップ (SoC) を開発しているQualcommという企業なので、基本的にQualcommのチップを搭載している端末のみがQuick Chargeに対応しています。

日本で販売されているAndroid端末の大半がQualcommのチップを搭載しているため、Quick Chargeに対応している機種も非常に多いです。 (日本でのデファクトスタンダート)

Quick Chargeのバージョン

Quick Chargeには2.0や3.0といったバージョンがありますが、数字が大きいほど新しいバージョンであり、新しいバージョンの方が「充電速度や安全性が向上している」とされています。

QC 4を除いてQuick Chargeは後方互換性を備えており 、例えばQC 3.0に対応していればQC 2.0にも対応しています。そのため、例えば今までQC 2.0のACアダプタを使っていて新しくQC 3.0の端末を買った場合でも、ACアダプタを使いまわしてQuick Chargeを利用することが出来ます。 (その際のQCのバージョンはQC 2.0)

Quick Charge 4/4+

Quick Charge 3.0の後継規格として、「Quick Charge 4」「Quick Charge 4+」という規格が登場しています。

QC 4/4+の最大の特徴は「USB PDの規格を利用しており、USB PDと互換性がある」という点です。QC 4/4+ ACアダプタはUSB PD端末をUSB PD充電することができ、逆にUSB PD ACアダプタはQC 4/4+端末をUSB PDで充電することができます。

QC 4とQC 4+の違いは「後方互換性があるか・ないか」です。QC 4は後方互換性がないため、QC 4またはUSB PDに対応しているACアダプタでないと急速充電を行うことはできません。逆にQC 4+は後方互換性を備えており、QC 3.0やQC 2.0対応のACアダプタでも急速充電を行うことが出来ます。

PowerIQ系 (Ankerなど)

PowerIQ

サードパーティのACアダプタには「○○独自の技術で最速かつ最適な充電を実現!」的な謳い文句で販売されているものが数多くあります。それらの中で最も有名なものの1つがAnkerのPowerIQですが、本記事ではそういった「最速・最適な充電をしてくれるらしい独自技術・規格っぽい何か」を「PowerIQ系」と総称し、説明します。

PowerIQ系は充電の規格ではない

「最速・最適な充電を実現!」などと言われると何かすごい独自の技術や規格のように思えますが、PowerIQ系あくまで接続された端末に応じて「Quick Charge対応ACアダプタ」だったり「Apple 2.4A給電対応ACアダプタ」として振る舞っているだけであり、PowerIQという充電規格が存在しているわけではありません

PowerIQ系の正体

例えばこのACアダプタ向けUSBコントローラIC (pdf) は、以下の急速充電規格に対応しています。

  • USB Battery Charging 1.2
  • Apple独自規格
  • Quick Charge 2.0/3.0
  • その他、AFC・FCP・SCP・MTK PEなど

このUSB電源コントローラICを採用すれば、1台で様々な急速充電規格に対応しているACアダプタを作れてしまうということです。こういったICを採用することによって複数の急速充電規格に対応し、結果として様々なメーカーのスマホを急速充電できるというのがPowerIQ系の正体です。

ただし、同じPowerIQ系のACアダプタであっても製品によって採用しているICが異なるため、対応している充電規格に差があります。せっかくACアダプタを買っても自分の使いたい規格に対応していなければ急速充電にはならないため、PowerIQなどという言葉に惑わされず、「自分のスマホの急速充電規格に対応しているかどうか」でACアダプタを選ぶようにしましょう

その他 (HuaweiやOPPOなど)

今まで説明した規格の他にもHuaweiの「SuperCharge」やOPPOの「VOOC」といった規格がありますが、どれもメーカー独自の規格で基本的に純正品しか対応していないので、スマホに付属してきたACアダプタ・ケーブルをなくさないようにしましょう。

所感

充電器をいくつも用意するのは面倒なので、スマホもPCもUSB PDに統一されて欲しいですね。