乱立するスマホ向け急速充電の規格について調べた

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スマートフォン・タブレット向け急速充電の規格が乱立していて分かりにくいので、規格別にどんな仕様になっているのか調べました。

はじめに

一言に急速充電と言っても、USBの規格で定められているものからメーカー独自のものまで、数多くの規格が乱立しています。

具体的には、

  • USB系
  • Quick Charge (Qualcomm)
  • Apple系
  • PowerIQ系
  • HUAWEI系
  • その他、マイナー規格

といった規格です。

これらの規格がどういった仕組みで急速充電を実現しており、利用するためには何が必要なのか調べてみました。

事前知識

各規格の解説に入る前に、USBにおける電力供給について簡単に説明しておきたいと思います。

今でこそかなりの電力を供給できるようになったUSBでの電力供給ですが、そもそものUSBの規格では

  • USB 2.0 : 2.5W (5V/0.5A)
  • USB 3.0 : 4.5W (5V/0.9A)

が供給できる最大の電力となっています。つまり、何らかの給電用規格に対応していない場合は4.5W(5V/0.9A)が供給できる最大の電力ということになります。

しかしながら、現在普及している急速充電規格を調べてみると、10Wより大きい電力を供給するものも珍しくありません。もはや「10W以下では話にならない」と言っても過言ではないほど、急速充電時の電力は大きくなっています。

このように大電力化の進むUSBでの電力供給ですが、それを実現している方法は「電圧を上げる」「電流を大きくする」という2つに分類することができます。というより、この2つ以外に方法はありません。中学校の理科でも習うように、電力(W[ワット])は電圧(V[ボルト])と電流(A[アンペア])の掛け算で決まるからです。

そんなわけで「何ボルト何アンペアが流れるのか」というのがスマホの充電では重要になってきますので、そこをハッキリさせながらそれぞれの急速充電規格について説明していきたいと思います。

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USB系

繰り返しになりますが、USBの世代ごとの給電能力は以下の通りとなります。

USBの世代 給電能力
USB 2.0 5V / 0.5A
USB 3.0 5V / 0.9A
USB 3.1 5V / 0.9A
USB 3.2 5V / 0.9A

これが基本となりますが、スマートフォンの普及とともに以下のような規格が追加で策定されました。

USB Type-C Current

  • 方法:電流を大きくする (最大5V/3A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、USB Type-C to USB Type-Cケーブル

USB Type-Cでは従来よりも多くの電気が流せるようになっており、5V/1.5Aを流せる「USB Type-C Current@1.5A」と、5V/3Aをを流せる「USB Type-C Current@3A」という2つの規格が用意されています。

USB PD

  • 方法:電圧を高くする、電流を大きくする (最大20V/5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、USB Type-C to USB Type-Cケーブル

「USB Power Delivery」の略で、規格上は20V/5A(100W)まで用意されています。しかしながら、現実的には発熱や安全性といった理由から、スマホでは9V/2Aとか12V/1.5A程度での給電となることが多いようです。

公式にUSB PDに対応しているスマホはPixelシリーズと最近のXperiaシリーズ(XZ3など)ぐらいですが、非公式にはiPhone 8/8 Plus/X/XS/XS MaxやGalaxy S8/S9/Note8/Note9、LG G5/G6/G7/V20/V30、Huawei P10/P20/Mate 9/Mate 10などが対応しており、実際に利用できる機種は意外と多いです。

USB BC 1.2

  • 方法:電流を大きくする (最大5V/1.5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

「USB Battery Charging 1.2」の略で、最大で7.5W(5V/1.5A)までの給電が可能となります。USB給電のための規格としては古い部類のもので、Android/iOSを問わずほとんどのモバイル機器が対応しています。

スマホ黎明期~普及期(2012年前後)にメジャーだった規格なので、USB Type-Cが登場した現在では「対応していて当然なので誰も気にしない規格」になりつつあります。

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Quick Charge (Qualcomm)

quick-charge

Quick ChargeとはQualcomm社が策定した急速充電の規格で、端末とACアダプタが対応していれば利用することが出来ます。(ケーブルはデータ通信ができるものであれば何でもOK)

動作原理

  • 方法:電圧を高くする (最大12V)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

Quick Chargeは、電源側で電気を9V等に昇圧してから端末に送ることによって、従来よりも大きい電力の供給を実現しています。

規格を策定したQualcommはスマホ向けチップ(SoC)を開発している企業なので、基本的にはQualcommのチップを搭載している端末のみがQuick Chargeに対応しています。(一部例外あり)

日本で販売されているAndroid端末の大半はQualcommのチップを搭載しているため、Quick Chargeに対応している機種も非常に多いです。(日本でのデファクトスタンダート)

Quick Chargeのバージョン

Quick Chargeには2.0や3.0といったバージョンがありますが、数字が大きいほど新しいバージョンであり、新しいバージョンの方が「充電速度や安全性が向上している」とされています。

また、Quick Chargeは後方互換性を備えており、QC 3.0に対応していればQC 2.0にも対応しています。なので、例えば今までQC 2.0のACアダプタを使っていて新しくQC 3.0の端末を買った場合でも、ACアダプタを使いまわして引き続きQuick Chargeを利用することが出来ます。(その際のQCのバージョンはQC 2.0)

Quick Charge 4/4+

Quick Charge 3.0の後継規格として、「Quick Charge 4」「Quick Charge 4+」という規格が登場しています。

QC 4/4+の最大の特徴は「USB PDの規格を利用しており、USB PDと互換性がある」という点です。QC 4/4+対応ACアダプタはUSB PD端末をUSB PD充電することが出来ますし、逆にUSB PD ACアダプタはQC 4/4+端末をUSB PDで充電することが出来ます。

ただ、1つだけ難点があって、QC 4/4+対応の端末とACアダプタがほとんど製品化されていません。「普及する・しない」以前に、そもそも製品がほとんどありません。そのため、しばらくはQC 3.0がスタンダードとして存在し続けそうです。(正直QC 4/4+は普及するのか怪しい)

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Apple系

iPhone/iPadへの給電は、大きく分けて「Apple独自方式」と「USB PDによる高速充電」の2種類があります。

Apple独自方式

  • 方法:電流を大きくする (最大5V/2.4A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

Apple独自方式のUSB給電は最大で12W(5V/2.4A)まで出力できます。iPhone 6以降のモデルが2.4A給電に対応しているようです。(5s以前の機種は非対応)

この2.4A給電を利用するには対応しているACアダプタが必要ですが、選ぶのはそう難しくありません。「機器に応じて最適な方法で充電!」といった謳い文句で売られているACアダプタを選べば、まず間違いなくApple独自の2.4A給電に対応しています。

高速充電 (USB PD)

  • 方法:電圧を高くする、電流を大きくする (最大20V/5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、MFi認証のあるUSB-C to Lightningケーブル

最近のiPhone/iPadは上記のApple独自12W給電に加えて「高速充電」にも対応しています。

「高速充電」というとAppleの独自規格のように思えますが、中身はUSB PDです。そのため、USB PDに対応したACアダプタであれば、Apple純正ではないサードパーティのACアダプタでも高速充電を行うことが出来ます。

2017年10月時点での高速充電対応機種は以下の通りとなっています。

1つ注意点としては、iPhone/iPadとACアダプタがUSB PDに対応していることに加えて、「MFi認証のあるUSB-C to Lightningケーブルが必要である」という点が挙げられます。

AmazonなどではサードパーティのUSB-C to Lightningケーブルが販売されていますが、あれらは全てMFi認証のない製品です。2018年10月時点では、MFi認証のあるUSB-C to LightningケーブルはApple純正品のみしか存在していないので、お金を無駄にしたくないのであれば多少高くともApple純正品の購入をオススメします。

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PowerIQ系 (Ankerなど)

PowerIQ

Amazonでは「接続された機器に応じて最適な充電を実現!」といった謳い文句のACアダプタが数多く販売されています。ここではそういったACアダプタを「PowerIQ系」と総称し、説明します。

動作原理

「接続された機器に応じて最適な充電を実現!」などと言われると何かすごい独自の技術や規格のように思えますが、PowerIQ系あくまで接続された端末に応じて「USB BC対応ACアダプタ」だったり「Apple 2.4A給電対応ACアダプタ」として振る舞っているだけであり、「PowerIQ」という規格があるわけではありません。

PowerIQ系の正体

例としてこのACアダプタ向け電源コントローラICを見て欲しいのですが、特徴として以下の様なことが謳われています。

  • USBバッテリ充電仕様1.2 (USB Battery Charging 1.2のこと)
  • iPod、iPhoneおよびiPadに対応したデバイダ・モード
  • 接続されたデバイスの充電に必要なD+/D–モードを自動的に選択

こういった特徴を持つ電源コントローラICが販売されているということは、このICチップを採用すればどのメーカーであってもPowerIQ系のACアダプタが作れてしまうということです。

「最大2.4Aで充電」などと書いてあるPowerIQ系ACアダプタの中身はどれもこういった電源コントローラICのはずなので、どのメーカーのものを買っても充電速度はほぼ同じになるはずです。

HUAWEI

FCP (HUAWEI QUICK CHARGE)

  • 方法:電圧を高くする (最大9V)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

「Fast Charger Protocol」の略です。といっても正式名称ではなく、あくまでインターネット上で勝手にそう呼ばれているだけです。 (HUAWEI純正ACアダプタには「HUAWEI QUICK CHARGE」というロゴが印刷されている)

Qualcomm Quick Chargeと同じく、電源側で電圧を9Vに昇圧してから端末へ給電することによって、従来よりも大電力の供給を実現しています。

SCP

  • 方法:電流を大きくする (最大5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、対応ケーブル

「SuperCharge Protocol」の略です。Mate 9で初めて採用された急速充電規格で、電圧を5Vよりも低くして発熱を抑え、その分大きな電流を流して充電速度を確保しています。

supercharge

左がSuperCharge

最大5Aも流すためか、SCPは専用ケーブルでないと有効にはなりません。

OPPO / OnePlus

VOOC (OPPO) / Dash Charge (OnePlus)

  • 方法:電流を大きくする (最大5V/4A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、対応ケーブル

VOOC/Dash Chargeは、電圧は5Vのまま、電流を最大4Aまで大きくすることによって、大電力を端末へと供給しています。

VOOCとDash Chargeはどちらも5Vのまま4Aまで流す規格であり、内部的にはかなり似ていると推測されます。(OPPOとOnePlusは親会社が同じ)

VOOC/Dash Chargeは、端末・ACアダプタ・ケーブルのすべてが対応していないと有効になりません。

Super VOOC

  • 方法:電圧を高くする、電流を大きくする (最大10V/5A)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ、対応ケーブル

Super VOOCはVOOCの進化系とも言える規格で、最大10V/5A(=50W)という非常に大きな電力を供給することが可能な規格です。(VOOCとの互換性は不明)

当然、Super VOOCを利用するには、スマホ・ACアダプタ・ケーブルのすべてが対応している必要があり、2018年10月時点での対応機種はOPPO Find X
の上位モデル(超级闪充版/兰博基尼版)とOPPO R17 Proの2機種のみとなっています。

GSMArenaのテストによると、2% -> 100%までの充電時間はわずか35分だったとのことで、おそらく現状で最速の急速充電規格と思われます。

日本ではマイナーな充電規格

Adaptive Fast Charging (Samsung)

  • 方法:電圧を高くする (最大9V)
  • 必要なもの:対応スマホ、対応ACアダプタ

Samsung製のデバイスは独自のAdaptive Fast Chargingに対応しています。ただ、ここ数年で発売された日本のキャリア版スマホは基本的にACアダプタが付属しておらず、GalaxyシリーズもACアダプタが付属してこないため、AFCは実質的に日本では利用できない規格となっています。

ただ、日本で販売されているGalaxyシリーズはほとんど(全部?)がAFCだけではなくQualcomm Quick Charge 2.0にも対応しています。なので、Quick Charge 2.0/3.0対応ACアダプタを使うことによって、急速充電を行うことが出来ます。

TurboPower (Motorola)

TurboPowerという規格を一言で説明するのは非常に難しいです。というのも、同じ「TurboPower対応」の機種・ACアダプタであっても、その中身が実はQualcomm Quick Chargeである場合もあれば、USB Type-C Currentの場合もあったり、はたまたMotorola独自規格である場合もあるからです。

「このMotorola端末の急速充電はどの規格なのか」という情報は調べてもなかなか出てこないので、付属のACアダプタ(ターボ電源)を壊したり紛失したりしないよう、気をつけた方が良いかもしれません。

Pump Express (MediaTek)

中華スマホによく採用されているMediaTekが策定した急速充電規格です。MediaTekとQualcommはスマホ用チップで熾烈なシェア争いをしているため、QualcommのQuick Chargeに対抗して策定されたものと推測されます。

BoostMaster (ASUS)

ZenFone 2はBoostMasterという急速充電の規格に対応していますが、ASUSが勝手に名前を付けただけで中身はただのQuick Chargeのようです。Quick Charge対応端末の一覧(pdf)にもZenFone 2が載っています。

1つ謎なのが、ZenFone 2はSnapdragonではなくIntel Atomを採用しているという点です。QC用チップを追加で載せたりでもしたのでしょうか。

所感

充電器をいくつも用意するのが面倒なので、スマホもノートPCもUSB Type-C CurrentとUSB PDに統一されて欲しいですね。